6月は梅雨に入り、季節の移ろいをより深く感じる時期です。

手紙やメールを送る際には、季節感を表現する「時候の挨拶」や「結びの言葉」を上手に取り入れることで、相手に対する気遣いや丁寧さを伝えることができます。

本記事では、6月にふさわしい時候の挨拶の書き方や使える季語、結びの表現まで、例文付きでご紹介します。

ビジネスシーンにも、親しい人とのやり取りにも活用できる内容になっていますので、ぜひご活用ください。

手紙を書くときに綺麗な手紙が書けずに悩んでいらっしゃる方がいたら、
別の記事で「きれいな手紙が書ける便箋と封筒」をご紹介しています。

良かったら読んでみてください。

「きれいな手紙が書ける!秘密の下敷き付き便箋と封筒【実例あり】」

👇

スポンサーリンク

6月の異称とその意味

日本には、季節ごとに古くから伝わる「異称」があり、手紙の書き出しに風情を添える言葉として使われています。

6月にも独特な異称がいくつかあり、これらを知っておくことで、文章に奥行きが加わります。

水無月(みなづき)の由来と他の異称

6月を表す異称としてもっとも知られているのが「水無月(みなづき)」です。

しかしその意味には意外な由来があります。

  • 「水無月」とは旧暦の6月を指し、「無」は「の」という意味で、「水の月」という意味になります。梅雨の時期でもあり、水に関係する言葉が多く使われます。
  • 他には「涼暮月(りょうぼげつ)」「風待月(かぜまちづき)」などもあり、それぞれ季節の特徴を表しています。

6月の季語には、梅雨入り、衣替え、夏越の祓(なごしのはらえ)があります。

季語の夏越の祓は、
新年から積み重なった罪穢れ(けがれ)や降りかかる災厄を
祓い(はらい)清め、無病息災を願うために行う神事です。

6月になると各地の神社はイネ科の多年草である、
茅(ちがや)をしつらえ、私たちはこれをくぐり心身を清めます。

6月の異名といえば水無月(みなづき)ですが、語源は諸説あります。

旧暦6月は夏の盛りだったことから、
水も涸(か)れ尽(つ)きるという意味で水無月。

田に水をひく月なので、水の月という意味で「水な月」(「無」は当て字)

農作業をみんなやり尽くした「皆し尽き」から水無月。

雷が多いことから、

「かみなり月」が「みなづき」に変化し、水無月。

6月は異称も多く、
涼暮月(すずくれづき)、蝉羽月(せみはづき)、鳴神月(なるかみづき)、
夏越月(なごしのつき)、松風月(まつかぜづき)葵月(あおいづき)、

常夏月(とこなつづき)、そして風待月(かぜまちづき)…
どれも美しい呼び名ばかりです。

蒸し暑い日が続くと、風を恋しく待ち、
ほんのささやかな風にも喜びを感じることができます。

引用

書名「美人の日本語」 

作者「山下景子」

出版社「幻冬舎」
著:山下 景子
¥660 (2022/06/10 13:56時点 | Amazon調べ)

6月の昔の呼び名である和風月名や異称を、
6月のはがきや手紙の時候の挨拶として使うと、
ひと味違った、風流な挨拶文になるのではないでしょうか。

京都市の発祥の和菓子の一つに、「水無月(みなづき)」があります。

白い「ういろう」の上面に甘く煮た小豆をのせ、三角形に切り分けたもので、
京都では夏越の祓が行われる6月30日に、1年の残り半分の無病息災を祈念して、
和菓子の「水無月(みなづき)」を食べる風習があるそうです。

6月の季語とその使い方

手紙の冒頭に使う時候の挨拶には、季語を取り入れることで、相手に季節の情緒を伝えることができます。

6月らしい季語を選ぶことが、洗練された印象を与えるポイントです。

向暑、薄暑、初夏などの季語の紹介

6月の季語には、暑さが増すことを表すものが多く、日々の気候に寄り添った挨拶文に使えます。

向暑の候


読み方: こうしょのこう

意味:
「向暑(こうしょ)の候」は、初夏から夏本番へと向かい、暑さが徐々に増してくる時期に使われる時候の挨拶です。


5月下旬から6月中旬にかけて使うのが適しており、季節の移り変わりを丁寧に表す表現です。

使用例(ビジネス文)

拝啓 向暑の候、貴社ますますご繁栄のこととお慶び申し上げます。

使用例(親しい人向け)

こんにちは。向暑の折、いかがお過ごしですか?日ごとに暑くなってきましたね。

薄暑の候

読み方: はくしょのこう

意味:
「薄暑の候」は、初夏に感じるうっすらとした暑さを表現する時候の挨拶です。
梅雨入り前後の、日差しが強くなり始めた頃に使われます。
6月上旬〜中旬にふさわしい、上品で落ち着いた印象を与える表現です。

使用例(ビジネス文)

拝啓 薄暑の候、貴社におかれましては益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。

使用例(親しい人向け)

こんにちは。薄暑の季節となりましたが、お変わりなくお過ごしですか?

梅雨晴れ

読み方: つゆばれのこう

意味:
「梅雨晴れの候」は、梅雨の合間に見られる晴れ間を表す季語です。
連日の雨の合間に、空が晴れて心地よい陽気になる様子を表現しています。梅雨時期ならではの一瞬の晴れ間を捉えた風情ある表現で、6月中旬から7月初旬の手紙や挨拶文で使われます。

使用例(ビジネス文)

拝啓 梅雨晴れの候、貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。

使用例(親しい人向け)

こんにちは。梅雨晴れの空がのぞくと、なんだかほっとしますね。お元気ですか?

夏至の候

読み方: げしのこう

意味:
「夏至の候」は、1年で最も昼が長くなる夏至(6月21日頃)前後に使われる時候の挨拶です。
本格的な夏が近づいてくる気配を表しつつも、爽やかな季節感も併せ持つ、品のある表現です。
6月中旬〜下旬の手紙にふさわしく、ビジネス文・私信どちらにも適しています。

使用例(ビジネス文)

拝啓 夏至の候、貴社ますますご発展のこととお慶び申し上げます。

使用例(親しい人向け)

こんにちは。夏至を迎え、日が長くなってきましたね。お元気ですか?

初夏の候

読み方: しょかのこう

意味:
「初夏の候」は、**夏の始まりである初夏の時期(5月下旬〜6月下旬)**に使われる時候の挨拶です。
爽やかな気候や、青葉が美しい季節を穏やかに伝える表現で、ビジネス・私的どちらの手紙にも幅広く使える汎用的な季語です。

使用例(ビジネス文)

拝啓 初夏の候、貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。

使用例(親しい人向け)

こんにちは。初夏の風が心地よい季節になりましたね。お変わりありませんか?

6月に咲く花とその花言葉

手紙に花の名前を織り込むことで、より繊細で情緒豊かな印象になります。

6月には、雨の季節を彩る美しい花が多く咲きます。

蛍袋(ほたるぶくろ)の特徴と花言葉

「蛍袋(ほたるぶくろ)」は、6月の代表的な花で、その可憐な姿と名前の由来も季節感を伝える要素となります。

  • 花言葉:「忠実」「正義」
  • 細長い釣鐘状の花を咲かせ、昔は子どもが蛍を中に入れて遊んだことから「蛍袋」と呼ばれるようになりました。

蛍袋(ほたるぶくろ)は、
日本中に広く分布し、各地の山野で見られる多年草です。 

草の丈は30センチから60センチ。

6月から7月蛍の飛び交う頃に、
細長い釣鐘方の可愛い花をうつむいて咲かせます。

花の長さは4センチから5センチ。

色は白に淡紫色の細かい斑紋の入ったものが多い。

しかし、濃紫紅のものもあり、
庭に植えられたり、茶花としても人気の花です。

蛍袋(ほたるぶくろ)は、カンパニュラ(ツリガネソウ)の仲間です。

宮澤賢治が、

「もちろんおきなぐさも咲いてゐるし
野はらは黒ぶだうしゅのコップもならべて
わたくしを款待するだらう」

と、この詩の中で「黒ぶだう酒のコップ」と呼んだのは、
多分このホタルブクロの花ではなかったでしょうか。

山の斜面などに、うつむき加減に揺れている、釣鐘型の花。

図鑑などには、

「子どもたちが蛍を捕まえて、この花の中に入れたので蛍袋という」と書かれています。

なるほど、蛍を捕まえてこの花の中に入れれば、さぞかし幻想的なことでしょう。

今では、栽培されていることも多いので、
それも可能ですが、本来は蛍が飛びかう場所に、
蛍袋は自生していないのだそうです。

蛍が飛ぶのは水辺。

蛍袋が生えるのは、日当たりのいい山の斜面など。

ということで、
この説には、疑問をさしはさむ人が多いようです。

花の形から、
別名 釣鐘草(つりがねそう)、風鈴草(ふうりんそう)、

そして提灯花(ちょうちんばな)。

提灯(ちょうちん)のことを、

古くは「火垂袋(ほたるぶくろ)」ともいったそうですから、

名前の由来としてはこちらの方が正しいのかもしれません。

引用  

書名「花の日本語」  

作者「山下景子」  

出版社「幻冬舎」
著:山下景子
¥627 (2022/06/10 14:54時点 | Amazon調べ)

6月の二十四節気とその意味

日本の伝統的な季節の区分である「二十四節気」は、自然の移ろいを表す美しい言葉が揃っています。

6月の節気も、手紙に用いることで品格を高められます。

6月のはがきや手紙の時候の挨拶は、上旬、中旬、下旬によっても違ってくるので、
それぞれ例文を交えて6月の季語の書き方をご紹介します。

まずは、はがきや手紙を出す日がいつごろか把握しましょう。

その上で、以下に記載している6月の二十四節気の
どの時期の季語に該当するかを確認しましょう。

小満(しょうまん)  :5月10日頃~6月5日頃

芒種(ぼうしゅ)    :6月6日頃~6月21日頃

夏至(げし)   :6月22日頃~7月6日頃

暖冬や冷夏があるように、
季節もその年によって移り変わる時期はさまざまです。

今の季節の6月は例年と比べて暖かいのか、
暑いのか、移り変わりの早さなどを考慮して、
はがきや手紙の季語と時候の挨拶を選びましょう。

ビジネス関係向けの時候の挨拶例文

取引先や上司など、ビジネス関係で手紙を書く際は、礼儀正しく格式のある表現が求められます。

6月にふさわしい文例を紹介します。

上旬の例文

小満(しょうまん)
「暦便覧」には、
「万物盈満(ばんぶつえいまん)すれば草木枝葉繁る」とあります。

万物しだいに長じて天地に満ち始めるという意味です。

蚕(かいこ)が眠りからさめて桑を食すようになり、
麦の穂が伸びて田植えの準備に忙しくなる時節。

そろそろ梅雨が地に恵みを与える頃でもあります。

6月上旬のはがきや手紙の時候の挨拶には、
「向暑の候」「薄暑の候」「初夏の候」などの季語がふさわしいです。

その年の6月の気温を考慮して、季語を選んで書くと良いでしょう。

・向暑の候、貴社いよいよご盛栄のこととお慶び申し上げます。

・薄暑の候、貴社いよいよご清祥のこととお慶び申し上げます。

・初夏の候、貴社いよいよご清栄のこととお喜び申し上げます。

中旬の例文

芒種(ぼうしゅ)

「暦便覧」には、
「芒(のぎ)ある穀類、稼種(かしゅ)する時也」とあります。

梅雨入り間近で田植えの開始時期。

芒種とは、
稲や麦といった芒(のぎ)のある穀物を植え付ける季節を意味します。

風に誘われて草原を歩くと、刺(とげ)のような突起が素足にひっかかります。

「禾」「芒」とも書く「のぎ」の季節です。

「芒種」という言葉と1年ぶりに再開する時です。

6月中旬のはがきの季語と時候の挨拶には、
「長雨の候」「紫陽花の候」「芒種の候」の季語をはがきや手紙に使用すると良いでしょう。

6月中旬は、「梅小黄なり(うめのみきなり)」。
「梅雨」の語源は「梅が熟す頃の雨」だとも。

七十二候でも、徐々に色づき出した梅の実が登場します。

「梅はその日の難逃れ」と伝わるほど、
梅の実には健康パワーがたっぷりと詰まっています。

季節の巡りにも時間差があるので、6月の季語だけを見ると
違和感を持つ言葉もありますが、誤りではありません。

・長雨の候、貴社いよいよご盛栄のこととお慶び申し上げます。

・紫陽花の候、貴社いよいよご清祥のこととお慶び申し上げます。

・芒種の候、貴社いよいよご清栄のこととお喜び申し上げます。

下旬の例文

夏至(げし)…

6月は、1年でもっとも高く太陽が昇り、もっとも昼が長くなる日。

「暦便覧」には、
「陽熱至極しまた、日の長きのいたりなるを以て也」とあります。

梅雨の真っ盛りで長雨が続きます。

季語の夏至(げし)を迎え、
冬から春、そして夏へと次第に伸びていく
日脚を楽しんできた方にとってはクライマックス。

6月下旬のはがきの季語の時候の挨拶として、
「夏至の候」「短夜の候」「梅雨晴れの候」といった季語を
はがきや手紙に使用すると良いでしょう。

・夏至の候、貴社いよいよご盛栄のこととお慶び申し上げます。

・短夜の候、貴社いよいよご清祥のこととお慶び申し上げます。

・梅雨晴れの候、貴社いよいよご清栄のこととお喜び申し上げます。

親しい人向けの時候の挨拶例文

友人や親戚など、カジュアルな関係の相手には、やわらかく温かみのある表現を選びましょう。

上旬の例文

・くちなしの甘い香りが漂ってくる季節となりました。

・梅雨めいた曇り空の下、今年もいよいよ田植えが始まりました。

・梅雨がもうそこまでやってきておりますが、お変わりございませんか。

・今年も大好物のさくらんぼが店頭に並ぶ季節となり、
 うれしくてなりません。

・今年もはや衣替えの季節となりましたが、
 つつがなくお過ごしのことと存じます。

中旬の例文

・青田をわたる風もさわやかな頃となりました。

・雨後の新緑がひときわ濃く感じられる今日この頃です。

・我が家では今年も青梅を瓶に詰め、梅酒をつくりました。

・夏至を過ぎたとはいえ、梅雨寒にふるえるような日もございます。

・梅雨明けが待ち遠しい今日この頃、
 ご壮健にてお過ごしのことと存じます。

・鮎釣りの人の姿を今日はずい分見かけました。

・青嵐。まみどりの風につつまれるよろこびを存分に味わっております。

下旬の例文

・長雨のみぎり、お変わりはございませんでしょうか。

・梅雨晴れの一日、夏本番を思わせる強い日差しとなりました。

・雨に濡れたあじさいの花が、ひときわ鮮やかに咲き競っております。

・梅雨の中休み、ひさしぶりの青空が気持ちいい一日となりました。

・じめじめと湿っぽい毎日ですが、
 気持ちだけはカラッといきたいですね。

6月の結びの言葉の例文

6月の結びの言葉は、相手の居住地の状況や、
その年の6月の気温から、季節感のある季語を使いましょう。

6月の季語の挨拶を入れたあと、「ご自愛専一に。」
「お健やかな日々をお過ごしください。」などの言葉で結びます。

結びの言葉(ビジネス関係)

・季節の変わり目ですが、くれぐれもご自愛ください。

 貴社の更なるご発展を心よりお祈り申し上げます。

・末筆ながら、貴社の一層のご発展をお祈り申し上げます。
 まずは略儀ながら書中をもちましてご挨拶申し上げます。

・末筆ながら、一層のご躍進のほどご祈念申し上げます。
 まことに略儀ではございますが、
 書中をもちましてご通知申し上げます。

・時節柄、くれぐれもご自愛ください。
 今後とも、よろしくご指導のほどをお願い申し上げます。
 社員皆々様には一層のご健勝を心よりお祈り申し上げます。

・これからもご指導ご鞭撻のほどをお願い申し上げます。
 皆様のご健康とご多幸をお祈り申しあげます。

結びの言葉(親しい人)

・もうすぐ梅雨がやってまいります。どうかご自愛専一に。

・梅雨入りも間近ですが、お健やかな日々をお過ごしください。

・若葉の色鮮やかなこの季節、ますますのご発展をお祈りしております。

・梅雨晴れの青空を期待しつつ、皆様のご健康をお祈りいたします。

・うっとうしいこの季節、気持ちだけは爽やかにまいりましょう。

・竹散る この季節の竹林の静けさにまさるものはありません。
 心おだやかに過ごしたいものです。

時候の挨拶6月の季語を使った「長寿祝いの送り状」例文

青田をわたる風もさわやかな頃となりました。

皆様にはいかがお過ごしでいらっしゃいますか。

このたび、
おじいさまが米寿を迎えられたとのこと、誠におめでとうございます。

お正月にお目にかかりました折には足腰もしっかりしておられ、
お声にも張りがおありで、とてもそんなお年とは思えませんでした。

武志さんも、
つねづねおじいさまの元気にあやかりたいと申しております。

本日、お祝いに、おじいさまのお好きなお酒、
山口の獺祭(だっさい)を送らせていただきました。

「酒は百薬の長」。

適量のお酒は、どんな良薬にも勝る。
とおっしゃっていたので、喜んでいただけると嬉しいです。

どうぞ、お身体を大切にされて、いつまでもお元気で。

梅雨入りも間近ですが、皆様お健やかな日々をお過ごしください。

まとめ

この記事では、
6月に使える時候の挨拶と結びの言葉をご紹介しました。

6月の季節をあらわす「梅雨」は、
北海道ではほとんど降らなく、
学校でも「北海道に梅雨はない」と習います。

それでも、「蝦夷梅雨(えぞつゆ)」という言葉が、
使われ続けているのは、実際の天気から人々が
「梅雨のような存在」を感じているからではないでしょうか。

6月の時季に本州と同じ原因の梅雨はなくても、
独自の季節感を表す言葉として「蝦夷梅雨」があります。

相手に合わせた時候の季語を入れて、
6月の時候の挨拶を書くことを心がけましょう。

  

・ビジネスで使える時候の挨拶
・1月~12月の季語と結びの言葉