クレーム電話で返答に迷ったときは、すぐに解決や返金を約束せず、確認できた事実と、自分の回答権限に合わせて言葉を選びましょう。
「今すぐ答えてほしい」「責任者に代わってほしい」「同じ話を何度もしている」。こうした言葉への返答は、対応の可否や履歴を確認できているかによって変わります。
この記事でいう「切り返し」は、相手を言い負かす言葉ではありません。申し出を整理し、必要な確認や次の対応につなぐための返答です。まずは早見表から、近い場面を選んでください。
例文を使う前に
以下は、説明用の架空の場面です。【 】内は実際に確認した内容へ置き換えてください。会社の対応方針・本人確認手順・回答権限を優先し、例文に合わせて原因や約束を作らないようにしましょう。
相手の発言から探す|切り返し例文の早見表
返答の前に何を確認する必要があるかも、あわせて見てください。
| 相手の発言・状況 | 返答の目的 | 先に確認すること | 例文の場所 |
|---|---|---|---|
| 「今すぐ対応すると約束して」 | 即答できる範囲を伝える | 事実・対応条件・判断権限 | 即答を求められた場合 |
| 「いつ連絡をもらえるの?」 | 未定と確定した予定を分ける | 担当者・連絡内容・実行できる日時 | 連絡時刻を尋ねられた場合 |
| 「責任者に代わって」 | 交代できるか確認して案内する | 責任者の在席・応答可否・引き継ぎ状況 | 責任者への交代 |
| 「同じ話を何度もしている」 | 確認できた履歴を活用する | 過去の申し出・案内・今回不足する情報 | 履歴の確認 |
| 要求に応じられないことが確定した | 対応できない理由と範囲を伝える | 適用条件・判断結果・説明できる範囲 | 要求を断る場合 |
| 相手の話と社内記録が異なる | 確認した範囲と未確認事項を分ける | 記録の対象・日時・調査範囲 | 認識と記録の違い |
| 同じ話が繰り返されている | 要点と次の対応を確認する | 追加情報・要望・決定事項・未定事項 | 会話を整理する場合 |
| 「そちらのミスでは?」 | 確認済みの不備と未確認の原因を分ける | 不備の内容・確認結果・対応権限 | 不備・原因への返答 |
| 人格を傷つける発言や脅迫がある | 組織での対応と安全確保につなぐ | 所属先の方針・相談先・緊急対応 | 問題のある言動への案内 |
謝罪・相づち・保留・引き継ぎなど、電話口での話し方を確認したい方は、クレーム電話対応の話し方|謝罪・確認・引き継ぎの例文とNG対応をご覧ください。
「今すぐ答えて」と言われても、対応可否を判断できないとき
相手の発言:「今すぐ返金すると約束してください。」
この例の前提:返金の条件や対象となる事実が未確認で、自分だけでは決定できない場面です。確認先の担当部署はわかっています。
先に確認すること:返金条件、必要な事実、自分の判断権限、確認先。
返答例
「返金できるか、この場での回答をご希望ですね。判断に必要な【未確認事項】が残っているため、今ここではお約束できません。【確認先の担当部署】で対応の可否を確認いたします。」
使う条件・注意点:必要な確認が残っている場合の返答です。返金できないことがすでに確定している場合は、確認中という説明で先延ばしにせず、要求を断る場合の例文を使います。
「確認いたします」は、返金の承諾や、回答時刻の約束ではありません。「必ず返金します」「今日中に解決します」と、未確認の結果を付け足さないでください。
「いつ連絡をもらえるの?」と尋ねられたとき
連絡時刻がまだ決まっていない場合
相手の発言:「何時に連絡をもらえますか。夕方には電話してください。」
この例の前提:連絡する担当者や予定が未定です。受電者が、社内で担当と連絡予定を確認することになっています。
先に確認すること:相手の希望時間、連絡先、予定確認を行う人、連絡を担当する部署。
返答例
「夕方のご連絡をご希望ですね。現時点では連絡時刻が決まっておらず、その時間にお電話することはお約束できません。私から【担当部署】へご希望を伝え、連絡する担当者と予定を確認いたします。」
使う条件・注意点:受電者が予定確認を行う場合の例です。別の人が行うなら、その役割に合わせて変えてください。相手の希望時間は、会社側が約束した時間とは分けて扱います。
未定と伝えた後は、所属先の手順に沿って担当者と予定を確認し、決まった予定を誰が案内するかまで整理しましょう。
担当者と、経過連絡の予定を確認できた場合
相手の発言:「その時間には結論が出るのですか。」
この例の前提:担当者から確認状況を連絡する予定は確認済みですが、調査完了の時刻は未定です。
先に確認すること:連絡担当者、実行できる日時、連絡内容、相手が連絡を受けられるか。
返答例
「【確認した担当者】から【確認済みの連絡予定】に、確認状況をお伝えする予定です。その時点で結論が出るかは、まだ確定していません。確認が続いている場合も、経過をご連絡します。この予定でよろしいでしょうか。」
使う条件・注意点:担当者が経過連絡を行えることを確認した場合だけ使います。相手と確認した後は、【合意した連絡予定】として記録してください。
- 経過連絡:その時点で確認できた内容や、残っている確認事項を伝えること。
- 最終回答:必要な確認と判断を終え、対応の可否などを回答すること。
- 解決完了:回答だけでなく、必要な対応が完了した状態。何をもって完了とするかは案件によります。
最終回答の予定を確認できた場合は、その内容を伝えます。ただし、「回答します」を「すべて解決します」に置き換えないようにしましょう。
「責任者に代わって」と言われたとき
責任者が電話に出られることを確認した場合
相手の発言:「責任者と直接話したいです。」
この例の前提:責任者が応答でき、受電者が伺った申し出と未確認事項をすでに共有しています。
先に確認すること:責任者の応答可否、引き継ぐ内容、共有が完了しているか。
返答例
「責任者の【氏名・役職】が、このお電話で対応できます。伺った【申し出の要点】と、まだ確認できていない点は共有しました。責任者におつなぎしてもよろしいでしょうか。」
使う条件・注意点:「共有しました」は、実際に共有済みの場合だけ使います。責任者への交代は、返金や例外対応を認める約束ではありません。
責任者が不在、または応答できるか確認中の場合
相手の発言:「今すぐ責任者に代わってください。」
この例の前提:責任者が電話に出られるか、まだ確認できていません。
先に確認すること:在席状況、応答可否、不在時の相談先、連絡予定。
応答可否を確認中の返答例
「責任者とのお話をご希望ですね。現在、電話に出られるか確認しています。確認のため、少々お待ちいただいてもよろしいでしょうか。」
不在を確認できた場合の返答例
「責任者は現在不在のため、このお電話では交代できません。【不在時の相談先】へご希望を伝え、責任者からの連絡予定を確認いたします。現時点では、連絡時刻は未定です。」
使う条件・注意点:不在の例文は、不在と相談先を確認できた場合に使います。戻る時刻や折り返し予定が不明なまま、「戻り次第すぐ電話します」と約束しないでください。
「同じ話を何度もしている」と言われたとき
対応履歴を確認できた場合
相手の発言:「前の担当者にも説明しました。また最初から話すのですか。」
この例の前提:必要な本人確認などを終え、該当する対応履歴を閲覧できています。一部の情報だけが不足しています。
先に確認すること:記録された申し出、前回の案内、確認済み事項、今回聞く必要がある情報。
返答例
「前回の記録で、【記録にある申し出】は確認できました。その内容を踏まえて対応します。今回の判断に必要な【不足している情報】が記録にないため、その点だけ伺ってもよろしいでしょうか。」
使う条件・注意点:読んだ履歴の範囲だけを伝えます。再確認する情報がある場合は、その理由を説明し、すべてを最初から話してもらう必要があるかを見直しましょう。
まだ対応履歴を確認できていない場合
相手の発言:「何度も連絡しています。記録は残っていないのですか。」
この例の前提:相手が過去の連絡について話していますが、受電者は該当する履歴をまだ確認できていません。
先に確認すること:履歴の確認方法、記録を探すために必要な情報、本人確認の手順。
返答例
「これまでにもご連絡いただいているとのことですね。私の手元では、まだ該当する履歴を確認できておりません。記録を確認するため、【必要な情報】を伺ってもよろしいでしょうか。」
使う条件・注意点:未確認なのに「記録はありません」「前の担当者から聞いています」と言わないでください。氏名や受付番号などは、所属先の手順に沿って必要な範囲で確認します。
要求に応じられないことが確定したとき
相手の発言:「今回だけでも、その対応をしてください。」
この例の前提:適用条件と対応可否を担当部署で確認し、要求に応じられないことが確定しています。受電者には、その判断結果を説明する権限があります。
先に確認すること:確認済みの理由、対象となる要求、説明できる範囲、ほかに案内できる対応の有無。
返答例
「【要求の内容】をご希望ですね。【確認した担当部署】で確認した結果、【確認済みの理由】のため、今回はその対応を承ることができません。」
使う条件・注意点:対応不可が確定している場合の例です。「難しいかもしれません」とぼかして、未確定であるかのように伝えないでください。「規定なので」とだけ言わず、説明できる条件や理由を添えます。
ほかに案内できる対応がある場合は、実施可否と案内権限を確認したうえで、次のように続けられます。
提供できる別の対応を確認済みの場合だけ追加
「別の対応として、【確認済みの対応】をご案内できます。ご利用の条件は【確認済みの条件】です。」
代替案がなければ、無理に付け足す必要はありません。返金・交換・補償・例外対応などを、その場の判断で作らないようにしましょう。
相手の認識と社内記録が異なるとき
相手の発言:「前の電話では、対応できると言われました。」
この例の前提:受電者が確認した対応記録には、相手が話す内容の記載がありません。ただし、過去の案内全体を確認できたわけではありません。
先に確認すること:確認した記録の対象と日時、ほかの記録の有無、追加確認できる窓口。
返答例
「前回、対応できるとの案内を受けたというお話ですね。私が確認した【対象の日時・窓口】の記録では、その案内内容を確認できておりません。別の記録があるか、【確認先】で確認いたします。」
使う条件・注意点:記録に見当たらないことと、案内がなかったことは同じではありません。「その説明はしていません」「お客様の勘違いです」と、確認範囲を超えて断定しないでください。
不具合についても、「確認した範囲では不具合を確認できていない」と「不具合がない」は意味が異なります。前者を後者の言い換えとして使わず、対象・日時・確認範囲を明確にします。
話が繰り返されるときは、要点と次の対応を確認する
相手の発言:「だから、さっきから同じことを言っています。」
この例の前提:通常の申し出について話が繰り返されています。申し出と要望は聞き取れており、担当部署への確認が必要です。
先に確認すること:新しい情報が加わっていないか、聞き違いがないか、残る確認事項、次の担当、連絡予定の確定・未定。
要点を整理する返答例
「ここまでの内容を確認させてください。【申し出の要点】について、【希望する対応】をご希望ということで、間違いありませんか。ほかに、今回の確認に必要な点はございますか。」
要点を確認した後、いったん終話を提案する例
「伺った内容をもとに、【担当部署】で【確認事項】を確認します。連絡予定はまだ未定のため、私から担当部署に確認いたします。いったんお電話を終えて、確認に進んでもよろしいでしょうか。」
使う条件・注意点:受電者が担当部署への確認と予定確認を行う場面の例です。連絡予定が合意済みなら、その担当者・日時・連絡内容に置き換えてください。
相手が新しい情報を伝えているなら、その内容も確認します。話が長いという理由だけで、申し出をすべて聞き取ったことにしないようにしましょう。
この例は、通常の会話を整理して終えるための提案です。暴言や脅迫などへの組織的な通話終了とは分けて考えます。また、確認に移る段階を「解決しました」とまとめないでください。
「そちらのミスでは?」への返答は、確認状況で分ける
自社の不備を確認できた場合
相手の発言:「前に案内された金額と違います。説明が間違っていたのでは?」
この例の前提:過去の案内記録を確認し、自社が誤った金額を伝えたことと、正しい金額を確認できています。受電者には訂正を説明する権限があります。
先に確認すること:誤った案内の内容、正しい情報、説明権限、補償など別の判断が必要な点。
返答例
「記録を確認したところ、前回お伝えした金額に誤りがありました。誤ったご案内をしてしまい、申し訳ございません。正しい金額は【確認済みの金額】です。」
使う条件・注意点:確認できた不備について、何を謝っているかを明確にします。この謝罪と訂正だけで、返金・差額補償・例外対応などを認めた説明にしないでください。
再発防止策を伝える場合も、実施する内容と案内できる範囲が確認済みであることが前提です。「二度と起こしません」と結果を保証しないようにしましょう。
原因がまだ確認できていない場合
相手の発言:「商品が使えず困っています。そちらのミスでしょう?」
この例の前提:商品が使えず困っているという申し出を受けていますが、原因は未確認です。担当部署で原因を確認することになっています。
先に確認すること:対象の商品、起きている状況、原因の確認先、必要な確認手順。
返答例
「商品を使えず、お困りとのことですね。原因は現時点では確認できておりません。伺った状況をもとに、【担当部署】で確認いたします。」
使う条件・注意点:相手が述べた不便な状況を受け止める返答です。未確認のまま「こちらの説明不足です」「すべて弊社のミスです」と原因を認めたり、反対に「弊社には問題ありません」と否定したりしないでください。
不便な状況への配慮、確認済みの不備への謝罪、未確認の原因説明は分けて考えます。謝罪の一言だけで法的責任の有無を判断せず、責任や補償について迷う場合は担当部署へ確認しましょう。
言い換えるときは、丁寧さより先に内容を確かめる
「できません」「ですが」「でも」「〜してください」を、場面にかかわらず禁止する必要はありません。確認済みの断りを明確に伝えたり、必要な行動を依頼したりする場面もあります。
見直したいのは、未確認の事実や、実行できない約束が含まれていないかです。次の比較は文法上の正誤を示すものではなく、内容を整えるための例です。
| 見直す返答 | 前提と修正理由 | 修正例 |
|---|---|---|
| 「返金できません」だけで終える | 返金不可と理由が確認済み。断る意味を保ち、説明を補う。 | 「【確認済みの理由】のため、返金は承れません」 |
| 「今日中に必ず返金します」 | 返金可否も時刻も未確認。元の約束を維持できないため、未確認の約束を取り除く。 | 「返金できるか確認が必要なため、今ここではお約束できません」 |
| 「前の担当者から聞いています」 | 実際には引き継ぎも履歴確認も未完了。事実と異なる説明を訂正する。 | 「まだ該当する履歴を確認できておりません。記録を確認いたします」 |
| 「不具合はありません」 | 一部の確認しか終えていない。意味を変え、確認範囲を超える断定を取り除く。 | 「【確認した範囲】では、現時点で不具合を確認できておりません」 |
相手が述べていない感情を付け加えたり、「お怒りはごもっとも」と機械的に肯定したりする必要もありません。話された内容と確認した事実に沿って、短く返答しましょう。
暴言・脅迫などがある場合は、組織の対応につなぐ
商品やサービスへの不満、説明や改善を求める申し出を、すべて問題行為として扱わないことが大切です。一方、人格を傷つける発言や脅迫などがある場合は、担当者が一人で抱え込まず、責任者や相談窓口につなぎます。
厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(令和8年度改訂版)」では、正当な意見・要望への対応と、問題のある言動への組織的な対応を分けています。類型別の対応例についても、業務内容や対応体制に合わせて準備する考え方が示されています。
相手の発言・状況:用件への不満に加え、対応者の人格を傷つける発言が続いている。
この例の前提:所属先の方針で、暴言を控えるよう案内することになっています。責任者へ相談できる体制があります。
先に確認すること:注意・交代・通話終了の方針、責任者への連絡方法、安全上の問題。
所属先の方針に沿って注意を伝える返答例
「お問い合わせの内容は確認いたします。個人への暴言はお控えください。」
使う条件・注意点:これは編集上の返答例であり、公式資料が定めた文言ではありません。注意しても続く場合の交代や通話終了は、所属先の方針と責任者の指示に沿って行います。
「何分たったら切る」「何回繰り返されたら終了する」と、この例文集だけで一律の基準を作らないでください。通常の申し出を整理する場面と、問題のある言動への通話終了は別の対応です。
脅迫などで危険を感じる場合は、例文を最後まで言うことより安全確保を優先します。周囲や責任者へ知らせ、緊急時には必要な緊急通報を行ってください。対応後に負担が残った場合も、上司や相談窓口へ伝えましょう。
参考:厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(令和8年度改訂版)」(PDF)。正当な意見・要望との区別、類型別の対応例、内部での報告・相談の箇所を参考にしています。
返答前・終話前に確認したいチェックリスト
- 事実:相手の申し出と、社内で確認できた内容を分けているか。
- 権限:返金・交換・補償・例外対応などを、自分が決定してよいか。
- 約束:実行できる内容と日時を確認したか。希望時間を約束した時刻に変えていないか。
- 連絡内容:最終回答と経過連絡を区別し、解決完了と混同していないか。
- 引き継ぎ先:次の担当が決まり、必要な内容を受け取っているか。
- 未定事項:原因・対応可否・担当者・連絡時刻など、未定の内容を明確にしたか。
受電から事実確認・権限判断・次の対応・記録共有まで、対応全体の流れを確認したい方は、クレーム電話対応の基本マニュアル|確認・引き継ぎ・記録の5つの手順をご覧ください。
切り返し例文は、確認した内容を伝えるための補助です。例文だけですべてを解決しようとせず、判断できないことは担当者につなぎ、実行できる次の対応を確認しましょう。