クレーム電話対応の基本は、話を聞く、事実と要望を確認する、回答できる範囲を判断する、次の対応を確認する、記録して共有することです。その場ですべてを解決しようとせず、確認が必要な内容は担当者につなぎましょう。
「最初に何を言えばよいかわからない」「返金を求められたが、自分では判断できない」「電話を終えた後、何を残せばよいのか迷う」。そんなときに確認できるよう、対応の流れを5つの手順にまとめました。
この記事は、最初に電話を受ける方の確認用です。実際の対応は、所属先のマニュアル・本人確認手順・判断権限に合わせてください。
謝罪や配慮の言葉は、相手が伝えた状況や、確認できた不備に応じて添えます。必ず同じ順番で謝罪を挟む、という意味ではありません。
例文の[ ]内は、実際に確認した情報へ置き換えてください。原因・返金・納期・連絡時刻などを、例文に合わせて作らないようにしましょう。
手順1|名乗り、申し出を聞く
最初は、所属先の受電ルールに沿って名乗る
まず会社名と自分の名前を名乗ります。相手の用件を聞く前から、原因や責任を含む謝罪をする必要はありません。
第一声の例文
「お電話ありがとうございます。[会社名]の[氏名]です。」
相手が困っている内容を話したら、説明や反論を急がず、申し出を聞きます。声の大きさや速さは、聞き取りやすさに配慮して調整しましょう。
状況を聞く例文
「詳しい状況をお聞かせいただけますか。」
謝罪は、何についてお詫びするかを明確にする
不便な状況への配慮と、確認できた自社の不備への謝罪を分けて考えます。「ご不快な思いをさせてしまい」といった言葉も、原因や責任と無関係に使えるとは限りません。
- 原因が未確認:相手が話した状況を受け止め、確認へ進む
- 自社の不備が確認済み:何の不備について謝るのかを伝える
- 対応方針に迷う:責任や補償を断定せず、上司・担当部署に確認する
原因が未確認の場合
「商品が使えない状態とのことですね。詳しい状況を確認いたします。」
自社の案内の誤りを確認できた場合
「ご案内した内容に誤りがあり、申し訳ございません。正しい内容をご説明いたします。」
相手の勘違いかもしれないと感じても、確認前にそう決めつけません。一方、「説明が不足していました」と、確認していない自社の不備を認めることも避けましょう。
謝罪・相づち・保留など、電話口での言葉を詳しく確認したい方は、クレーム電話対応の話し方と、場面別の例文をご覧ください。
手順2|必要な事実と要望を確認する
申し出に合う項目を選んで聞く
話の区切りで、対応に必要な情報を確認します。次の項目を、すべての電話で一律に尋ねる必要はありません。
- 対象の商品・サービス・案内内容
- いつ、どのようなことが起きたか
- 現在どのような状態か
- これまでに連絡した窓口と、受けた案内
- 相手が希望している対応
- 本人確認や折り返しに必要な情報
氏名・連絡先・注文番号などは、確認の目的を説明し、必要な範囲で聞きます。本人確認が必要な手続きでは、所属先で定められた方法を使ってください。
質問へ移る例文
「状況を整理するため、いくつか順番に伺ってもよろしいでしょうか。」
要望を確認する例文
「今回、ご希望の対応をお聞かせいただけますか。」
相手の申し出と、確認済みの事実を分ける
相手から聞いた内容は、まだ社内の記録などで確認できていないことがあります。「商品が届いていないとの申し出」と「配送状況を確認した結果」は、分けて記録しましょう。
復唱は、聞き取った内容に間違いがないかを確かめるために行います。原因の確定や、返金・交換の承諾とは別です。
申し出と要望を整理する例文
「商品が届いておらず、配送状況の確認をご希望とのことですね。伺った内容に間違いはありませんか。」
話が長く続く場合は、黙ってすべてを聞き続けるのではなく、「ここまでのお話を整理してもよろしいでしょうか」と区切りを作れます。すでに確認した内容を活用し、同じ質問を必要以上に繰り返さないようにしましょう。
手順3|回答・対応できる範囲を判断する
事実・対応条件・自分の権限を確認する
回答する前に、次の三つを確認します。
- 事実:説明に必要な内容を確認できているか
- 対応条件:返金・交換などの条件を確認できているか
- 権限:自分がその回答や対応を決定してよいか
三つのうち、必要な確認が残っている場合は、その場で結論を約束しません。説明できる部分だけを伝え、確認が必要な点を担当者へつなぎます。
判断に迷ったときの確認
- 原因を推測で説明していないか
- 相手の要望を聞いただけで、承諾していないか
- 権限のない返金・補償・納期を約束していないか
- 案内する対応が、実際に利用できるか
即答できないことを、確認先とともに伝える
返金の可否を判断できない場合
「返金をご希望とのことですね。対応できるか、[担当部署]で確認する必要があります。今ここではお約束できません。」
「わかりません」だけで終えず、何を、どこへ確認する必要があるのかを示します。確認先がまだ不明なら、その窓口を社内で確認してください。
対応できないことが確認できた場合は、理由と範囲を説明します。代替案は、実際に提供できることを確認してから案内しましょう。
対応できないことを確認した場合
「[確認した理由]のため、ご希望の[対応]は承ることができません。」
手順4|引き継ぎ・折り返しなど、次の対応を確認する
保留・転送の前に、理由と了承を確認する
無言で保留や転送をせず、何のために待ってもらうのかを伝えます。転送する場合は、引き継ぎ先が対応できるか確認しましょう。
保留の例文
「[確認事項]を確認するため、少々お待ちいただいてもよろしいでしょうか。」
担当者が対応できることを確認した場合
「担当者におつなぎしてもよろしいでしょうか。これまで伺った内容は、こちらから共有します。」
確認に時間がかかるとわかったら、電話に戻って状況を説明します。折り返しに変更する場合は、相手の了承と、社内の連絡予定を確認してください。
相手の希望時間と、会社側の約束を分ける
「夕方に連絡してほしい」と言われても、担当者がその時間に連絡できるとは限りません。相手の希望を聞いたことと、会社側が時刻を約束したことを区別します。
- 相手の希望:電話に出られる時間帯や、希望する連絡方法
- 社内で確認した予定:誰が、いつ、何について連絡できるか
- 相手と合意した約束:実行できる予定として案内し、確認した内容
連絡時刻がまだ決まっていない場合
「現時点では、折り返しの時刻をお約束できません。ご希望の時間帯を担当者に伝え、連絡予定を確認いたします。」
この案内だけで終えず、担当者への共有と予定確認を進めます。連絡予定を誰が確認し、相手へ案内するかも社内で決めてください。
最終回答と、確認状況の連絡を区別する
調査が終わる時刻と、途中の状況を連絡する時刻は同じではありません。結論が出るか不明な場合は、「回答します」ではなく、確認状況を連絡する予定として伝えます。
経過連絡の予定を確認できた場合
「[担当者]から[確認した連絡日時]に、確認状況をご連絡します。確認が続いている場合も、その時点の状況をお伝えします。この予定でよろしいでしょうか。」
連絡先は必要な範囲で確認し、聞き間違いがないか復唱します。約束した連絡に間に合わないとわかった場合は、所属先の手順に沿って、予定変更や経過を知らせましょう。
手順5|対応内容を記録し、担当者へ共有する
申し出・確認済み事項・約束を分けて残す
電話中のメモをもとに、対応後は記録を整理します。次の担当者が「何を確認し、何を回答する必要があるか」を理解できる内容にしましょう。
特に、相手の発言と社内で確認できた事実、相手の希望とこちらの約束を分けることが大切です。わからない項目を推測で埋めないでください。
クレーム電話の対応記録テンプレート
受電日時:[日時]
受電者:[氏名・部署]
対象の商品・サービス:[確認した対象]
相手の情報:[対応に必要な範囲の氏名・連絡先など]
相手の申し出:[相手から聞いた内容]
希望する対応:[確認した要望]
社内で確認できた事実:[確認内容・確認先]
未確認事項:[今後確認する内容]
こちらが説明・謝罪した内容:[実際に伝えた内容]
案内した対応・条件:[案内内容/未案内]
相手の希望時間:[確認した希望/希望なし/未確認]
約束した連絡日時:[合意した日時/約束なし]
連絡の内容:[最終回答/経過連絡/未定]
次の担当者:[確認した担当者/未定]
引き継ぎ状況:[共有済み/受け取り確認済み/未共有]
特記事項:[必要な発言・出来事]
この書式は確認用のひな形です。所属先の記録様式がある場合は、そちらを使ってください。個人情報を含む記録の保存先や共有範囲も、会社のルールに合わせます。
一般的な伝言や不在時のメモも含めて確認したい方は、電話メモの書き方と、コピー用テンプレートをご覧ください。
引き継いだ後の担当を確認する
メモを送っただけでは、担当者が確認したかどうかわからないことがあります。急ぎの用件や約束がある場合は、所属先の方法に沿って、受け取りと次の担当を確認しましょう。
社内への引き継ぎ例
[商品・サービス]について、[申し出の内容]との連絡があり、[希望する対応]をご希望です。
[未確認事項]はまだ確認できていません。[対応の可否]は未回答です。
相手の希望時間は[希望時間/未確認]、こちらが約束した連絡日時は[合意した日時/約束なし]です。
この後の確認・連絡を担当できるか、確認をお願いします。
電話が途中で切れた場合も、聞いた内容、案内したこと、未確認事項を残します。折り返しの必要性と連絡先の確認状況を整理し、担当者へ相談してください。
クレーム電話で避けたい対応と、修正の考え方
丁寧な言葉に変えるだけでは、未確認の説明や約束は解消しません。次の例では、言葉の印象と、内容の問題を分けて確認します。
確認前に相手の誤解と決めつける
避けたい例:「それはお客様の勘違いです。」
問題点:記録や経緯を確認する前に、相手の認識が誤りだと判断しています。
言い換え例:「ご案内の内容と今回のお話について、記録を確認いたします。」
使う条件:案内の内容や記録を確認する必要がある場合。
担当者の予定を確認せず、連絡時刻を約束する
避けたい例:「担当者が戻ったら、本日中に必ず電話します。」
問題点:担当者が連絡できるか、確認できていません。
言い換え例:「担当者に申し出を共有し、連絡予定を確認いたします。」
使う条件:担当者の連絡予定がまだ決まっていない場合。
実在するか確認していない代替案を示す
避けたい例:「返金はできませんが、必ず別の商品に交換します。」
問題点:返金や交換の条件を確認していない場合、権限外の約束になります。
言い換え例:「ご希望の対応が可能か、条件を確認いたします。」
使う条件:返金・交換などの対応条件が未確認の場合。
「できません」という言葉自体を一律に禁止する必要はありません。対応不可と確認できたことは、理由と範囲を明確に説明します。未確認なのに断定すること、確認済みなのに曖昧な期待を残すことを避けましょう。
暴言や脅迫がある場合は、一人で対応を続けない
不満の申し出と、問題のある言動を分ける
商品やサービスへの不満、説明や改善を求める申し出を、すべてカスタマーハラスメントとして扱わないことが大切です。厚生労働省のマニュアルでも、正当な申し入れと、社会通念上許容される範囲を超える言動を区別しています。
声が大きい、話が長いという理由だけで決めつけず、要求の内容、言動、経緯などを確認します。一方、脅迫や人格を傷つける発言などが続く場合は、上司・責任者へ相談してください。
参考:厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」(PDF)
交代・注意・通話終了は、職場の方針に沿う
対応を交代する条件、注意を伝える方法、通話を終了する条件は、所属先の方針を確認します。「何分たったら切る」「何回繰り返されたら終了する」と、この記事だけで一律の基準を設けるものではありません。
所属先の方針に沿って、暴言を控えるよう伝える場合
「お問い合わせの内容は確認いたします。個人への暴言はお控えください。」
危険を感じる言動があるときは、一人で判断せず、周囲や責任者へ速やかに知らせます。安全確保を優先し、緊急時は必要な緊急通報を行ってください。
記録には「怖い人」「悪質な人」といった評価だけを残さず、必要な発言や行為、対応の経緯を記載します。実際に確認していない回数や時間を付け足さないようにしましょう。
電話を受ける前に確認しておきたい社内ルール
対応中に迷いにくくするため、次の点を所属先で確認しておきましょう。
- 自分が回答・決定できる範囲
- 上司や担当部署へ相談する条件
- 担当者が不在の場合の連絡先
- 折り返し予定を確認し、管理する方法
- 対応記録の保存先と共有範囲
- 暴言・脅迫などがある場合の交代・終了・安全確保の手順
職場全体の対応ルールや共有方法を整えたい方は、クレーム対応マニュアルの基本構成と、社内共有の考え方も参考にしてください。実際の運用は、自社の商品・サービスや判断権限に合わせて決めます。
クレーム電話対応でよくある質問
最初から強い口調で話されたら、すぐに謝るべきですか?
まず名乗り、何についての申し出かを聞きます。強い口調だけで、自社の原因や責任を判断しないでください。相手が伝えた状況に配慮し、確認できた不備があれば、その内容について謝罪します。
謝罪すれば、責任を認めたことになりますか?
謝罪の言葉だけで一律には判断できません。「何について謝ったか」と、前後の説明が重要です。「不快な思いへの謝罪だから責任と無関係」と決めつけず、未確認の原因や補償は断定しないようにします。責任に関わる判断に迷う場合は、担当部署へ確認してください。
折り返し時刻が決まっていない場合は、どうしますか?
未定であることを伝え、相手の希望時間を必要に応じて聞きます。その後、社内で担当者と連絡予定を確認してください。希望時間を聞いただけで、その時刻に電話すると約束した扱いにしないようにします。
約束した時刻までに調査が終わりません。どうすればよいですか?
約束した連絡を、調査が終わるまで放置しないようにします。担当者に状況を確認し、所属先の手順に沿って経過や予定変更を知らせます。次の回答時刻も、確認できていないまま約束しないでください。
担当者へ引き継げば、受電者の対応は終わりですか?
所属先の役割分担によります。少なくとも、申し出・要望・未確認事項・約束を共有し、引き継ぎ先が対応を引き受けたかを確認しましょう。誰が次の連絡をするのかが曖昧なままにならないようにします。
まとめ|確認した内容をもとに、次の担当へつなごう
クレーム電話対応では、申し出を聞き、必要な事実と要望を整理したうえで、自分が回答できる範囲を判断します。確認が必要な内容は、担当者へつなぎましょう。
特に大切なのは、相手の申し出と確認済みの事実、相手の希望とこちらの約束を分けることです。連絡予定を確認し、対応記録を共有するところまで進めると、次の担当者が必要な確認を引き継げます。
電話口ですべてを解決しようとせず、所属先のルールと判断権限に沿って対応してください。