クレームの電話を受けたときは、すぐに解決策を出そうとせず、相手の話を聞き、事実と要望を整理し、自分で判断できない内容を担当者につなぐことが大切です。

丁寧な言葉を使っても、原因を決めつけたり、確認できていない返金や対応時刻を約束したりすると、後の説明と食い違うおそれがあります。

この記事では、電話口で使える短い例文を中心に、聞き方、謝罪、事実確認、保留、折り返し、引き継ぎを紹介します。所属先の対応方針と、自分が回答できる範囲に合わせて使ってください。

一次対応の基本の流れ

  1. 名乗り、相手の申し出を聞く
  2. 不便や不快な思いへの配慮を伝える
  3. 事実と相手の要望を確認する
  4. 自分が回答できる範囲を判断する
  5. 保留・折り返し・担当者への引き継ぎを行う
  6. 次の対応を確認し、記録する

一次対応とは、最初に申し出を受け、内容を確認して、回答や引き継ぎにつなぐ対応です。その場ですべてを解決することまでは求められません。

例文の会社名・氏名は架空のものです。【確認事項】【担当部署】などは、実際に確認できた情報に置き換えてください。

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最初は名乗り、相手の話を聞く

電話を受けた直後の言葉

まず会社名と自分の名前を名乗ります。所属先で受電の言葉が決まっている場合は、その形式に合わせましょう。用件を聞く前から、原因や責任を含む謝罪をする必要はありません。

「お電話ありがとうございます。株式会社青葉の田中です。」

相手が困っている内容を伝えたら:
「詳しい状況をお聞かせいただけますか。」

「通常の名乗りは冷たい」「最初に謝れば相手は落ち着く」と一律に考えるのではなく、相手が伝えた内容に合わせて言葉を続けます。

相づちは、話を聞いていることを伝える

短い相づちを挟みながら、相手の話を聞きます。相づちは、返金などの要求を承諾することや、未確認の原因を認めることとは分けて考えましょう。

「はい、お話を伺っています。」
「その後、どのような状況になりましたか。」
「商品が使えない状態とのことですね。」

相手が述べていない感情を推測して、「相当お怒りですよね」「ご不安なのは当然です」と決めつける必要はありません。話された状況を、短く確認する方法もあります。

話の区切りで確認へ移る

説明の途中で反論や質問を重ねると、話が整理しにくくなります。話の区切りで、確認したいことを伝えましょう。

「ここまでのお話について、確認してもよろしいでしょうか。」
「状況を整理するため、いくつか順番に伺います。」

長く続く話も、すべてを聞き続けなければならないわけではありません。確認が必要なときは、その理由を伝えて会話を整理します。

通常の受け方や取り次ぎの言葉から確認したい方は、電話対応の基本マナーと敬語フレーズも参考にしてください。

事実確認と謝罪の範囲を整理する

確認する項目は、申し出の内容に合わせて選ぶ

次の項目から、対応に必要なものを選びます。すべての電話で、氏名や注文番号などを一律に尋ねる必要はありません。

  • どの商品・サービスについての申し出か
  • いつ、どのようなことが起きたか
  • 現在、どのような状態か
  • これまでに誰へ連絡し、どのような案内を受けたか
  • 相手が希望している対応は何か
  • 回答や折り返しに必要な連絡先・時間帯
「どの商品についてのお問い合わせでしょうか。」
「その状態になったのは、いつ頃でしょうか。」
「現在も同じ状態が続いていますか。」
「今回、ご希望の対応を伺ってもよろしいでしょうか。」

個人情報や注文情報を確認する場合は、その目的を説明し、業務上必要な範囲にとどめます。本人確認が必要な手続きは、所属先のルールに従ってください。

復唱は、相手の申し出と確認済みの事実を分ける

相手から聞いた内容は、まだ社内の記録などで確認できていないことがあります。復唱したことを、そのまま事実の確定や対応の承諾にしないようにしましょう。

「届いた商品が動かず、交換をご希望とのことですね。伺った内容に間違いはありませんか。」

この段階では、商品の不具合の原因や、交換できるかどうかは別途確認が必要です。

配慮・不備への謝罪・未確認の説明を使い分ける

謝罪は、「何についてお詫びするのか」を明確にします。不便への配慮、確認できた自社の不備、まだ不明な原因を分けて伝えましょう。

不便な状況への配慮

「お使いになれず、お困りとのことですね。詳しい状況を確認いたします。」

自社の案内の誤りを確認できた場合の謝罪

「ご案内した内容に誤りがあり、申し訳ございません。正しい内容をご説明いたします。」

原因がまだ確認できていない場合

「現時点では原因を確認できておりません。伺った内容をもとに、担当部署で確認いたします。」

自社の対応によって不便をかけたことが確認できているなら、その点についてお詫びします。一方、未確認の段階で「すべて弊社のミスです」と原因や責任を断定しないようにしましょう。

「ご不快な思いをさせてしまい」といった表現も、どの場面でも責任と無関係に使える言葉ではありません。状況と、所属先の対応方針に合わせて選んでください。

回答できないときは、確認と引き継ぎにつなぐ

自分が判断できる範囲を確認する

回答する前に、「必要な事実が確認できているか」「自分に判断する権限があるか」を確認します。返金、交換、補償、納期などは、言葉だけで約束しないようにしましょう。

「こちらでは今すぐ判断できないため、【担当部署】に確認いたします。」

説明できる事実がある場合は、その部分を伝えます。「わかりません」で終えるのではなく、何を確認する必要があるのかを示しましょう。

保留にするときは、理由と了承を確認する

「【確認事項】を確認するため、少々お待ちいただいてもよろしいでしょうか。」

無言で保留にせず、相手が了承したことを確認します。確認に時間がかかるとわかったら、電話に戻って現在の状況を伝えます。

「お待たせしております。確認に時間がかかるため、折り返しのご連絡に変更してもよろしいでしょうか。」

折り返しを提案する場合は、連絡する担当者と予定を社内で確認します。

折り返しは、回答と経過連絡を区別する

確認が完了する時刻と、途中の状況を連絡する時刻は同じではありません。最終回答が間に合うか不明な場合は、解決や回答完了を約束しないでください。

連絡予定を確認できた場合

「【担当者】から【合意した連絡予定】に、確認状況をご連絡いたします。確認が続いている場合も、その時点の状況をお伝えします。」

連絡時刻がまだ決まっていない場合

「現時点では、折り返しの時刻をお約束できません。ご希望の時間帯を担当者へ伝え、連絡予定を確認いたします。」

予定が決まらないまま対応を放置しないよう、担当者への共有と予定確認を進めます。約束した連絡に間に合わないとわかった場合は、所属先の手順に沿って経過を知らせましょう。

折り返し先は、対応に必要な範囲で確認し、復唱します。相手の希望時刻は、そのまま会社側が約束した時刻として扱わないようにしてください。

担当者には、申し出と未確認事項を共有する

担当者につなぐ前に、相手の申し出、希望する対応、確認できたこと、まだ不明なことを共有します。引き継ぎ先が対応できるかも確認しましょう。

相手への案内:担当者が対応できることを確認した場合

「この件を確認する担当者におつなぎいたします。これまで伺った内容は、こちらから共有します。」

社内への引き継ぎ

「商品が動かないとの申し出があり、交換をご希望です。購入情報と原因は未確認です。交換できるかどうかについては、まだ回答していません。」

再確認が必要な点は、引き継いだ担当者から説明します。「同じ話をもう一度してください」とだけ伝えず、すでに聞いた内容を活用しましょう。

要求に応じられないときは、確認した理由を伝える

対応できないことが確認できた場合は、曖昧な期待を残さず、理由を短く説明します。別の対応を案内する場合も、実際に利用できることを確認してから伝えます。

「確認の結果、【確認した理由】のため、ご希望の【対応】は承ることができません。」

別の方法を案内できる場合:
「別の方法として、【確認済みの対応】をご案内できます。」

対応できないことが確定しているのに「難しいかもしれません」とぼかしたり、実際にはない代替案を作ったりしないようにしましょう。

避けたい返答と、場面に合う言い換え

ここでいう「切り返し」は、相手を言い負かす言葉ではありません。話を整理し、確認や次の対応につなぐための返答です。

敬語の誤りと、説明不足、未確認の約束は、それぞれ分けて見直します。

敬語の誤用

避けたい言い方:「担当者に伺ってください」

問題になる理由:相手の「尋ねる」という動作に、謙譲語の「伺う」を使っています。

言い換え例:「担当者にお尋ねください」

使う場面:相手から担当者へ質問してもらう必要がある場合。こちらで引き継げる場合は、担当者へつなぐ方法を先に検討します。

敬語の誤りではないが、説明が足りない表現

避けたい言い方:「担当が違うので、わかりません」

問題になる理由:相手が次にどうすればよいか、伝わりません。

言い換え例:「この件は【担当部署】で確認する内容です。担当者に確認いたします」

使う場面:確認先がわかっていて、自分では回答できない場合。

敬語の誤りではないが、突き放した印象になりやすい表現

避けたい言い方:「規約なので、できません」だけで終える。

問題になる理由:どの条件を確認し、なぜ対応できないのかが伝わりません。

言い換え例:「【該当する条件】を確認した結果、今回は【対応】の対象外です。そのため、ご希望の対応は承れません」

使う場面:適用条件と対応の可否を確認し、説明する権限がある場合。

未確認の事実や、権限外の約束を含む表現

避けたい言い方:「すべて弊社のミスです。必ず返金します」

問題になる理由:原因や返金条件が未確認のまま、責任と対応を約束しています。

言い換え例:「返金をご希望とのことですね。対応できるか確認が必要なため、今ここではお約束できません」

使う場面:原因や対応条件を確認していない段階。

言葉の印象は、前後の説明や状況でも変わります。「できません」という言葉そのものを禁止するのではなく、必要な理由と対応範囲を伝えましょう。

敬語の説明は、文化庁「間違いやすい敬語」の解説も参考になります。

短い会話例で、一次対応の言葉を確認する

商品への不満を聞き、内容を確認する

担当者:
「お電話ありがとうございます。株式会社青葉の田中です。」

お客様:
「届いた商品が動きません。」

担当者:
「お使いになれず、お困りとのことですね。詳しい状況をお聞かせいただけますか。」

お客様:
「届いてすぐに試しましたが、動きませんでした。」

担当者:
「届いた後、初めてお使いになったときから動かなかったとのことですね。確認のため、商品名を伺ってもよろしいでしょうか。」

この段階では、原因を決めつけず、相手が伝えた状況を整理します。商品に応じた確認は、所属先の手順に沿って進めてください。

自分では回答できず、担当者へつなぐ

次は、担当者が電話に出られることを確認できた場面です。

お客様:
「交換してもらえるのですか。」

担当者:
「交換できるかどうかは、担当部署で確認する必要があります。担当者を確認しますので、少々お待ちいただいてもよろしいでしょうか。」

お客様:
「はい。」

担当者:
「お待たせいたしました。担当者におつなぎいたします。商品が動かず、交換をご希望という内容は、こちらから共有しました。」

お客様:
「お願いします。」

担当者:
「それでは、おつなぎいたします。」

担当者へつながることと、交換が認められることは別です。引き継ぎの時点で、交換を約束しないようにしましょう。

確認前に返金を求められ、即答できないことを伝える

お客様:
「今すぐ返金すると約束してください。」

担当者:
「返金をご希望とのことですね。対応できるか確認が必要なため、今ここではお約束できません。」

お客様:
「いつ返事をもらえるのですか。」

担当者:
「現時点では、回答できる時刻も確認できておりません。担当者へ申し出を共有し、連絡予定を確認いたします。」

お客様:
「夕方なら電話に出られます。」

担当者:
「夕方のご連絡をご希望ですね。その時間帯を担当者に伝えます。折り返し先を伺ってもよろしいでしょうか。」

相手の希望時間を聞いただけでは、会社側がその時刻を約束したことにはなりません。引き継ぎ後は、実行できる連絡予定を確認し、必要な案内を進めます。

暴言や脅迫などは、一人で抱え込まない

不満の申し出と、問題のある言動を分ける

商品やサービスへの不満、説明や改善を求める申し出を、すべて問題行為として扱わないことが大切です。強い口調だけで、要求の内容が不当だと決めつけることも避けましょう。

一方、人格を傷つける発言、脅迫、過度な要求などが続く場合は、通常の確認だけでは対応できないことがあります。所属先の基準に沿って、上司や責任者へ相談してください。

対応の交代や通話終了は、所属先の方針に沿う

対応を交代する基準、注意を伝える方法、通話を終了する手順は、あらかじめ確認しておきます。担当者が一人で我慢し続ける必要はありません。

責任者への交代を案内する場合

「この件は責任者に引き継いで対応いたします。担当者を確認しますので、少々お待ちください。」

交代できることを確認してから案内してください。危険を感じる場合は、確認の会話を続けることより安全の確保を優先し、所属先の緊急対応手順に従います。

厚生労働省の資料でも、正当な意見・要望への対応と、カスタマーハラスメントへの組織的な対応を分けています。職場の対応体制を確認したい場合は、「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(令和8年度改訂版)」も参考になります。

対応後に不安や負担が残った場合も、上司や相談窓口へ伝えてください。対応の難しさを、担当者の話し方や準備だけの問題にしないことが大切です。

電話を終える前の確認と、対応後の記録

申し出と次の対応を確認して終える

電話を終える前に、相手の要望と、こちらが行う次の対応を短く確認します。未解決の内容を「解決しました」とまとめないようにしましょう。

「本日は【申し出の要点】について承りました。次に、【担当部署】で【確認事項】を確認いたします。」

連絡予定が合意できている場合:
「【担当者】から【合意した連絡予定】に、【回答または確認状況】をご連絡いたします。」

最後に:
「伺った内容やご案内について、確認しておきたい点はございますか。」

連絡先や日時に聞き間違いがないか、必要な部分を復唱します。最後は、所属先の受電ルールに合わせて「失礼いたします」などと伝えて終えます。

記録は、申し出・確認済みの事実・約束を分ける

記憶が新しいうちに、電話で聞いた内容と自分の対応を整理します。「怒っていた」だけで終えず、相手が何を述べ、何を希望したかを記録しましょう。

【受電日時】
【受電者】
【相手の情報】対応に必要な範囲のみ
【申し出】相手が述べた内容
【要望】交換、説明、返金など
【確認済みの事実】
【未確認事項】
【伝えた回答】承諾したこと・していないこと
【相手の希望する連絡時間】
【会社側が合意した連絡予定】未定なら「未定」
【引き継ぎ先】
【次の対応・担当者】

暴言などがあった場合は、所属先のルールに沿って具体的な発言や状況を記録します。個人情報を含む記録は、保存場所・共有範囲・保管方法のルールに従って扱ってください。

記録を渡すだけでなく、担当者が受け取ったことも確認します。書式や伝言のまとめ方は、電話メモの書き方とテンプレートで詳しく確認できます。

対応前後のチェックリスト

対応前に準備すること

  • 所属先の対応方針と、自分の回答権限を確認する。
  • 担当部署・上司・相談窓口への連絡方法を確認する。
  • メモと、保留・引き継ぎの短い例文を用意する。
  • 暴言などが続く場合の交代・通話終了の手順を確認する。

電話を終える前に確認すること

  • 相手の申し出と希望を確認したか。
  • 聞いた内容と、確認済みの事実を分けたか。
  • 原因や責任を未確認のまま断定していないか。
  • 権限のない返金・交換・補償を約束していないか。
  • 次の対応と、連絡予定の確定・未定を伝えたか。

対応後に行うこと

  • 申し出、回答、未確認事項、約束を記録する。
  • 必要な担当者へ共有し、受け取りを確認する。
  • 合意した連絡予定を管理する。
  • 困った点や負担を、上司・相談窓口へ伝える。

電話口で言葉に迷ったら、まず「伺った内容を確認してもよろしいでしょうか」と会話を整理しましょう。確認できたことを伝え、自分では判断できないことは、適切な担当者につなぎます。