イライラが強く、物を投げたり、机をたたいたりしそうなときは、原因を説明するより先に、自分と周囲の安全を守りましょう。上手に話せなくても、会話を止めることや、交代を頼むことから始められます。
今、物に当たりそうな人へ|安全にできる行動から選ぶ
- 手に持った物は、安全にできる範囲で静かに置く。刃物や割れ物を持ったまま、人に近づいたり移動したりしないでください。
- 会話や作業を止め、人や危険な物から距離を取る。片付けるために、危険な物を改めて手に取る必要はありません。
- 育児・介助中は安全を確保し、頼める大人に交代を求める。子どもや介助が必要な人を、危険な状態に残して外出しないでください。
すべてを順番に行う必要はありません。今、安全にできることを選び、距離を取るだけでは危険を抑えられない場合は、緊急の助けを求めてください。
日本国内で、今すぐ人を傷つけそう・暴力が起きているなど、警察の緊急対応が必要なときは110番。重いけがや意識の異常など、救急車が必要なときは119番です。一般の相談窓口や知人からの返信を待たず、現在地と起きていることを伝え、指令員の案内に従ってください。
この記事では、物に当たりそうな場面で使える短い言葉と、その後の支援の求め方を紹介します。怒りが完全になくなることを、安全行動の条件にしなくて大丈夫です。
怒りを感じることと、物に当たる行動を分けて考える
物に当たりそうになった自分を、人格ごと責める必要はありません。ただし、物を投げる、壁や机をたたく、扉を強く閉める行動は、けがや周囲の恐怖につながることがあります。
人に直接触れていなくても、安心して過ごせる状況が損なわれる場合があります。家族や子どもに、自分を怒らせないことや、怒りを鎮めることを任せず、行動を止める支援を求めましょう。
殴る・投げる「発散」に置き換えない
この記事では、クッションを殴る、別の物を投げる、物を壊す、大声で威嚇するといった方法を対処として勧めません。まずは、物への動作を続けず、人や危険な物から距離を取ることを優先します。
飲酒で抑えようとしたり、処方薬を自己判断で増やしたりすることも避けてください。怒ったまま運転に出ることはせず、運転中なら安全な場所に停車します。機械操作中は職場の手順に従って安全に停止し、必要なら交代を求めましょう。
会話や作業を止め、距離を取る言葉
長い説明より、今の状態と、これから取る安全行動を短く伝えます。相手の言動を変えさせる条件として、物に当たることを持ち出さないでください。
1.家族との会話を止める
短い言葉を伝えられる状況なら、会話の中断を知らせます。
今、物に当たりそうなくらい気持ちが強くなっている。安全のため、ここで話を止めます。
これは自分の状態と行動を伝える言葉です。相手を黙らせたり、要求を受け入れさせたりするために使うものではありません。説明を続けること自体が危険なら、説明を完成させるより距離を取ることを優先してください。
2.同じ部屋から離れることを伝える
見守りや介助などの安全を確保でき、移動が可能な場合の例です。
いったん別の部屋に移ります。いつ話せるかは今は決められないので、再開については安全に話せる状態になってから考えます。
相手を追いかけたり、出口をふさいだりしないでください。危険が残っている間は、約束の時間に合わせて話し合いを再開する必要はありません。
3.職場で道具を使う作業を中断する
上司や担当者に、作業を安全に続けにくいことと、必要な交代を伝えます。
今、感情が強くなっていて、道具を使う作業を安全に続けることが難しいです。いったん停止しますので、交代か作業変更をお願いします。
機械や設備は、その場の安全手順に従って扱います。一人で停止できない場合は、担当者へ直ちに支援を求めてください。
育児・介助中は、安全を守れる大人に交代を頼む
4.育児の交代を頼む
頼む相手が安全に対応できる状況で、今すぐ交代が必要なことを伝えます。
今、物に当たりそうで、子どもを安全に見守り続ける自信がない。今すぐ見守りを交代してほしい。私は別の場所で支援を求めます。
実際に大人が引き継いだことを確認してください。子どもに自分を落ち着かせてもらったり、きょうだいの世話を当然のように任せたりしないようにします。
相手が自分を怖がっている場合は、近づいて引き継ぎを迫らず、距離を保ち、状況に応じて別の支援や緊急対応を求めます。
5.介助を交代してほしいとき
介助が必要な人の状態と、途中になっている作業を伝えます。
今は気持ちが高ぶっていて、安全に介助を続けるのが難しいです。ここからの介助を交代してください。何が済んでいて、何が必要かを短く伝えます。
交代できる人がいない場合は、利用中の支援事業所などに連絡し、状況と必要な支援を相談します。介助される本人に怒りの管理を任せないでください。
乳幼児を抱いていて危険を感じた場合
乳幼児を抱いたまま危険を感じるときは、安全な寝床などにそっと寝かせ、揺さぶらないでください。こども家庭庁は、泣きやまない赤ちゃんにイライラしそうな場合、安全な場所に寝かせていったん離れ、少ししたら戻って様子を確認する方法を案内しています。
長時間放置したり、自宅に残して外出したりすることは勧めません。安全を保てる範囲で少し距離を取り、電話などで支援を求めます。発熱や嘔吐などがある、体調が心配な場合は、医療機関に相談してください。
支援が来るまで安全を保てない、人を傷つけそうな危険が切迫している場合は、通常の育児相談の返答を待たず、緊急の助けを求めてください。
身近な人に、電話やLINEで助けを求める言葉
頼む内容を具体的にすると、相手も対応できるか判断しやすくなります。危険な場に来てもらうことや、危険な物を取り上げてもらうことは頼まないでください。
6.安全な場所から、電話で支えてほしいとき
その場にいない信頼できる人に、対応できるか確かめます。
今、物に当たりそうで、人や物から離れたところにいる。一人では止めにくい感じがあるので、電話で話せる? ここへ来るのではなく、相談先につながるのを手伝ってほしい。
怖がっている相手に、そばにいることを求めないでください。電話で話せても、差し迫った危険が続く場合は緊急対応を優先します。
7.育児中、一人で抱えきれない状態を伝える
近くに頼れる大人がいない場合は、安全を確保したうえで、連絡できる人や支援窓口に状態を伝えます。
子どもと二人でいて、物に当たりそうなほど余裕がなくなっている。今は子どもの安全を確保しているけれど、一人では続けにくい。利用できる支援を一緒に探してほしい。
例文は実際の状態に合わせて使ってください。安全を確保できていない場合は、そのことを曖昧にせず伝えます。相手が対応できない、返信がない場合は、その人だけを待たず、自治体の子育て相談や児童相談所など、別の支援につなぎましょう。
8.警察の緊急対応が必要なとき
今すぐ人を傷つけそうで止められないなど、切迫した状況を110番で伝える例です。
今、自分が人を傷つけそうで、止められません。場所は○○です。今ここで起きている状況を伝えます。助けてください。
通報では、住所や目印、けがの有無など、尋ねられたことに答えます。重いけがなどで救急車が必要な場合は119番です。危険な物が近くにある場合も、取りに戻らず、その状況を伝えてください。
すでに物に当たってしまったら、安全と責任ある対応を優先する
まず行動を止め、人や危険な物から距離を取ります。相手に近づかずに確認できる範囲で、けがの有無と周囲の安全を確かめ、重いけがや差し迫った危険があれば警察・救急へ助けを求めてください。
破片を素手で拾うなど、危険な後片付けを急がないでください。謝罪や説明のために、怖がっている相手を追いかけたり、逃げ道をふさいだりすることも避けます。
9.落ち着いた後、自分の行動について責任を伝える
相手が連絡を望まず、接触が危険や負担になる場合は、伝えることを急がないでください。安全に連絡でき、相手の意向を尊重できる段階で使う例です。
私が机をたたいたことで、怖い思いをさせたことを受け止めています。あなたのせいではありません。壊した物への対応と、繰り返さないための専門家への相談を進めます。今すぐ返事や話し合いは求めません。
実際にした行動に置き換えます。修理や弁償についても、相手の安全と意向に配慮して対応してください。謝罪を受け入れることや、すぐ許すことを相手に求めないようにします。
繰り返す前に、合図・交代先・相談先を決める
落ち着いたときに、物を強く握る、声が大きくなる、動作が荒くなるなど、自分が気づける変化を振り返ります。これらは全員に共通する兆候でも、病気の診断項目でもありません。
記録するなら、起きた場面、自分が取った行動、必要だった助けを短くまとめます。相手の落ち度を並べるためではなく、次の安全行動と支援を考えるために使います。
10.安全な時間に、交代方法や負担を相談する
相手が話すことを望み、安全に相談できる場合に限って、今後の取り決めを話します。
物に当たらないための対応を、専門家にも相談したいと思っている。会話を止める合図や、家事・育児の交代を頼める方法を、安全に話せるときに相談したい。私の行動を見張る役目は頼まない。
家族だけで管理する仕組みにせず、支援者や専門家も含めて考えます。道具を使う作業の見直し、休息や負担の調整、交代できる人を増やすことなども相談できます。
人や危険な物から距離を取り、安全を確保できた後の過ごし方は、イライラしたときの対処法10選も参考にしてください。呼吸や体の力をゆるめる方法だけで、危険な行動を必ず止められるわけではありません。
相談前に気持ちを整理したい場合は、ストレスを言語化するコツと例文も使えます。書くことでつらさが増すときは中断し、整理できないまま相談して構いません。
通常の相談と、緊急の助けを分けて考える
11.医療機関で、実際の行動と不安を伝える
繰り返す場合や、止められない不安がある場合は、生活に大きな支障が出る前でも、かかりつけ医や精神科・心療内科に相談できます。
このところ、イライラすると物を投げそうになることが繰り返しあります。実際に机をたたいたこともあり、自分だけで止め続けられるか不安です。起きる場面や頻度を伝えるので、対応や必要な支援を相談したいです。
実際にしたこと、いつ頃からか、どの程度起きるか、けがや周囲への影響、睡眠や飲酒・服薬の状況などを、分かる範囲で伝えます。原因や病名を自分で決めてから受診する必要はありません。
12.地域の相談窓口で、つながる先を尋ねる
受診先が分からない場合などは、地域の精神保健福祉センターや保健所などに相談する方法もあります。相談内容、予約の要否、受付時間は各窓口の公式案内で確認してください。
怒りが強くなると物に当たりそうになり、家族を怖がらせることがあります。自分の行動を変えるために相談したいです。利用できる医療機関や専門的な支援について教えてください。
家庭内で威圧や暴力を繰り返している場合は、一般的な気分転換だけで済ませず、暴力をやめるための専門的な支援も探してください。内閣府は配偶者暴力の加害者プログラムに関する情報を公開していますが、地域での実施状況や対象、利用条件はそれぞれ確認が必要です。
職場では、産業医や社内の相談窓口を利用できる場合があります。仕事に関するメンタルヘルスの相談先として、厚生労働省の「こころの耳」もあります。利用対象や相談方法・受付時間は公式ページで確認してください。
通常の相談窓口は、現場への緊急出動を頼む窓口ではありません。今すぐ人を傷つけそう、暴力が起きている、重いけががあるときは、相談予約やメールの返答を待たず、110番・119番に必要な助けを求めてください。
まとめ|怒りを消すより先に、安全行動と支援につなぐ
物に当たりそうなときは、手に持った物を安全に置く、会話や作業を止める、人や危険な物から距離を取るなど、今できる行動を選んでください。育児や介助中は、安全を確保し、頼める大人や支援先に交代を求めます。
一人で抑え続けることだけを目標にせず、必要な助けを短い言葉で伝えて構いません。安全を守ることと、自分の行動に責任を持って支援につながることを、次の一歩にしてください。