家族のひと言に、つい言い返しそうになる。職場で届いたメッセージに腹が立ち、強い言葉を打ち込んでしまう。そんなとき、まず呼吸を確かめて、返事をする前に少し間を置いてみませんか。
イライラする自分を責める必要はありません。この記事では、無理のない呼吸の手順と、うまくできないときの対応を紹介します。怒りを消したり、嫌なことを我慢したりするための方法ではありません。
イライラしたときの呼吸法|まずは無理のない手順から
呼吸を試すのは、安全に手を止められるときです。運転中や火・刃物を扱う作業中は、まず安全を確保してください。
- 返信や会話をいったん止めます。
スマートフォンを置く、話を区切るなど、すぐに反応しない時間をつくります。 - 楽な姿勢を取ります。
椅子に座る場合は背もたれを使い、足裏を床につけます。安定していれば立ったままでもかまいません。目は開けたままで大丈夫です。 - 今ある息を、苦しくない範囲でゆっくり吐きます。
最後まで絞り出そうとせず、口から静かに吐いてみましょう。長く吐くことを競う必要はありません。 - 息を止めず、やさしく吸います。
鼻から吸えるなら、そっと吸ってみます。大きく吸い込もうと頑張らず、お腹を無理に膨らませる必要もありません。 - 無理のない速さで続け、体調を確かめます。
吐く・吸うを穏やかに続けます。「苦しくないか」「力んでいないか」を確かめ、つらければそこで終えてください。
めまい、息苦しさ、不快感があれば中止し、普段の呼吸に戻してください。急に立ち上がらず、楽な姿勢で様子を確かめましょう。症状が強い、続く場合は、呼吸法を繰り返すより医療機関への相談を優先してください。
秒数よりも、苦しくないことを優先する
英国の公的医療サービスNHSは、楽な姿勢で無理なく呼吸し、役立つ場合には吸うとき・吐くときにそれぞれ1から5まで数える方法を紹介しています。ただし、最初から5まで数えられなくてもよいとしています。
数を意識すると力んでしまうなら、数えずに行ってかまいません。この記事では、まず「返事を止めて、呼吸を確かめる」ための短い区切りとして紹介しています。NHSが案内する練習時間を、今その場で達成する課題にする必要はありません。
家族・職場・家事の途中で取り入れるには
家族に強く言いそうになったとき
言い返す前に、いったん口を閉じて呼吸を確かめます。そのまま会話を続けるのが難しい場合は、「今は少し時間がほしい」と短く伝えてから休憩しましょう。相手の目の前で、無理に平静を装い続けなくて大丈夫です。
職場でメールやチャットを返す前
書きかけの返信は送らず、下書きにします。画面から少し目を離し、足裏を床につけて楽な姿勢を取ってから、無理のない呼吸を試します。
すぐに内容を決められない場合は、返答できる時刻を知らせることもできます。落ち着くまで待つ間に、必要な連絡まで途切れないようにしましょう。
家事や育児の途中で張り詰めたとき
調理中なら火や刃物の扱いを安全に区切るなど、先に作業を止められる状態にします。子どもの見守り中や介助中は、呼吸へ集中するために周囲への注意をそらさないでください。
目を開けて普段の呼吸を続けるだけでもかまいません。休憩が必要なら、頼める大人に交代をお願いするなど、子どもや介助が必要な人の安全を確保してからにしましょう。
少し時間をもらいたいときの短い例文
長く理由を説明しようとすると、かえって言葉が強くなることもあります。今の状態と、どうしたいかを短く伝えてみましょう。
家族との会話をいったん止めたい
今は強い言い方になりそうだから、少し休ませて。10分後に、話を続けられそうか声をかけるね。
職場ですぐに返答できない
内容を確認してからお返事したいので、少しお時間をください。本日15時までに一度ご連絡します。
落ち着いてから話し直したい
大事なことだから、今は急いで答えずに考えたい。今日の夕食後に、もう一度話せるかな。
家事や育児を交代してほしい
今ちょっと余裕がなくて、5分休みたい。子どもを見ていてもらえる?
時刻や時間は、実際に対応できる目安に置き換えてください。再開が難しければ、約束した時刻にそのことを伝え、次に話せるタイミングを相談しましょう。
呼吸を意識すると、かえってつらくなるとき
「ちゃんと吸えているかな」と気になって不安になる場合は、呼吸を調整するのをやめてかまいません。何度も試して、無理に落ち着こうとしなくて大丈夫です。
安全な場所で目を開け、部屋の中の物を眺めたり、足裏が床に触れている感覚を確かめたりする方法に切り替えてみましょう。それも負担なら、何かを実践するより休むことを選んでください。
呼吸に集中する方法が合わないときは、ほかの方法を選んでも大丈夫です。イライラしたときの対処法10選では、その場で試せる対処法を紹介しています。
呼吸だけで、不満や負担まで解決しようとしない
呼吸を試しても、頼まれごとの多さや、傷つく言い方をされた事実が変わるわけではありません。少し間を置いた後で、休息が必要なのか、負担を減らしたいのか、伝えたいことがあるのかを確かめてみましょう。
少し落ち着いてから、「何が嫌だったのか」「本当はどうしてほしかったのか」を整理したいときは、ストレスを言語化するコツと例文も参考にしてください。すぐに言葉にできなければ、後回しでかまいません。
呼吸法を試すときの注意点
- 深く吸うことや、長く吐くことを頑張らない。長い息止めや、速く大きな呼吸を繰り返す方法は、ここでは行いません。
- 体調が悪いときは休む。苦しさを我慢して続けず、不快感や痛みがあれば中止します。
- 持病があり不安な場合は、主治医に確認する。呼吸器や心臓などの病気で治療中の場合は、治療上の指示を優先してください。
- 強い症状をイライラのせいと決めつけない。強い息苦しさや胸痛、意識がおかしいなど、緊急性が疑われる場合は呼吸法で様子を見続けず、119番などで救急の助けを求めてください。
イライラやつらさが続き、眠れない、家事や仕事に支障がある場合は、かかりつけ医や心療内科・精神科などに相談できます。呼吸で対処できるようになるまで、一人で頑張る必要はありません。
相手に恐怖を感じる場合は、呼吸を整えて二人だけで話し合おうとせず、安全な場所への移動や、信頼できる人・相談機関への連絡を優先してください。
イライラしたときの呼吸法に関するよくある質問
何秒吸って、何秒吐けばよいですか?
秒数を必ず守る必要はありません。NHSには吸うときと吐くときに数を数える例がありますが、数えることが負担なら省き、苦しくないペースを優先してください。
腹式呼吸がうまくできなくてもよいですか?
お腹を上手に動かすことを目標にしなくて大丈夫です。お腹を押し出したり、胸を無理に動かさないよう固めたりせず、楽に呼吸できる姿勢を探しましょう。
呼吸をしてもイライラが収まらないときは?
落ち着かなかったからといって失敗ではありません。呼吸の調整を終え、休憩や安全に距離を取る方法を選べます。その場で話し合いや返信を再開しなくてもかまいません。
人前で目を閉じずに行ってもよいですか?
目を開けたままで大丈夫です。周囲の安全を確かめられる状態で行い、運転や機械操作など注意が必要な作業中は、呼吸の練習に集中しないでください。
まとめ|返事をする前に、無理のないひと呼吸を
イライラしたときは、まず返信や会話をいったん止め、安全な姿勢で、苦しくない範囲の呼吸を試してみましょう。深く吸うことや、決まった秒数を守ることを頑張る必要はありません。
合わなければやめてよく、怒りが残っていても自分を責めなくて大丈夫です。呼吸を、休憩したり必要なことを伝えたりする前の、小さな区切りとして使ってください。
この記事は一般的なセルフケアの情報であり、医師による診断や治療に代わるものではありません。
参考情報
- NHS「Breathing exercises for stress」(楽な姿勢・無理のない呼吸・数え方の参考)
- NHS inform「Tips for doing breathing and relaxation exercises」(不快感や痛みがある場合の中止について)