「嫌なことがあったのに、何がつらいのか説明できない」「モヤモヤするけれど、言葉が出てこない」。そんなときは、きれいな文章を書こうとしなくて大丈夫です。
ここでいう気持ちの言語化とは、上手な文章にすることではなく、今の自分の状態を短い言葉で確かめることです。「嫌だった」「疲れていた」の一言からでも始められます。
この記事では、出来事・気持ち・望みを分ける書き方と、そのまま使える例文を紹介します。書いても気持ちが変わらない日があっても、失敗ではありません。
ストレスの言語化は、短い言葉から始めてよい
最初から「なぜつらいのか」を説明しようとすると、かえって言葉に詰まることがあります。まずは、今の状態に近い言葉を一つ選んでみましょう。
たとえば「会議のあと、なんだか嫌だった」「家事が続いて疲れていた」で十分です。理由や解決策は、すぐに見つけなくてもかまいません。
厚生労働省も、モヤモヤした気持ちを書く方法を紹介し、文章が苦手なら絵や落書きでもよいこと、手書きが面倒なら携帯電話やパソコンを使ってもよいことを案内しています。この記事の記入欄も、自分に合う形に変えて使ってください。
「何が起きたか・どう感じたか・本当はどうしてほしかったか」を分ける
モヤモヤを一度に説明しようとせず、次の三つを別々に書いてみます。すべて埋める必要はありません。書けるところだけで大丈夫です。
1.何が起きたかを書く
まずは、見聞きしたことや起きたことを短く書きます。相手の気持ちを推測する言葉は、ここではいったん脇に置きます。
例:「お願いしていた作業の返事が、夕方までなかった」
2.どう感じたかを書く
その出来事のとき、自分に近かった気持ちを選びます。一つに決められなければ、二つ以上書いてもかまいません。
例:「予定が立てられず焦った。後回しにされたようで寂しかった」
3.本当はどうしてほしかったかを書く
相手を責める文章を考える前に、自分が望んでいたことを確かめます。「何をしてほしいか」がまだわからない場合は、「今は休みたい」など自分の希望でも大丈夫です。
例:「すぐに作業できなくても、いつ返事ができるか教えてほしかった」
三つをつなげると、「返事が夕方までなくて、予定が立てられず焦った。いつ返事ができるか教えてほしかった」となります。これは相手に送るための完成文ではなく、まず自分の気持ちを確かめるためのメモです。
言葉が浮かばないときに選べる表現
ぴったりの言葉を探さなくても、近いものを選べば十分です。「少し」「かなり」「たぶん」を付けてもかまいません。
- 嫌だった:言い方がきつく感じた/話を遮られて嫌だった
- 焦った:時間が足りなくて焦った/返事がなくて焦った
- 悲しかった:わかってもらえず悲しかった/期待していた分、悲しかった
- 疲れていた:頼まれごとが続いて疲れていた/今日は人と話す余裕がなかった
- 不安だった:先がわからず不安だった/間違えていないか心配だった
- 困った:急な変更に困った/一人では決められず困った
「怒りなのか悲しさなのかわからない」なら、「嫌だった。悲しかったのかもしれない」のように書いても大丈夫です。気持ちを一つの名前に決める必要はありません。
仕事・家族・人間関係で使える言語化の例文
仕事:急な依頼が重なったとき
- 何が起きたか:今日中の作業をしている途中で、別の急ぎの仕事を頼まれた。
- どう感じたか:どちらを優先するか決められず、焦った。余裕がなくて疲れた。
- 本当はどうしてほしかったか:優先順位と、それぞれの締め切りを確認したかった。
一文にする例:「急ぎの仕事が重なって焦った。先に、どちらを優先するか確認したかった」
家族:家事を一人で抱えていると感じたとき
- 何が起きたか:夕食の準備と片付けを、一人で続けていた。
- どう感じたか:疲れた。気づいてもらえていないようで寂しかった。
- 本当はどうしてほしかったか:片付けを分担するか、手伝えることがあるか聞いてほしかった。
一文にする例:「準備と片付けが続いて疲れていた。少し手を貸してもらえたら助かった」
人間関係:話を途中で遮られたとき
- 何が起きたか:自分の話の途中で、別の話題になった。
- どう感じたか:最後まで聞いてもらえず、悲しかった。
- 本当はどうしてほしかったか:結論を急がず、最後まで聞いてほしかった。
一文にする例:「話の途中で別の話題になり、少し悲しかった。最後まで聞いてほしかった」
例文は、そのまま相手に伝える必要はありません。自分だけが見るメモなら、もっと短く、率直な言葉でも大丈夫です。
ノートやスマホにそのまま使える記入欄
以下の四行をコピーして使えます。「どうしてほしかったか」が浮かばなければ、空欄のまま終えてかまいません。
今日のメモ
何が起きた?:__________
どう感じた?:__________
本当はどうしてほしかった?:__________
今の自分に必要なことは?:__________
記入例
何が起きた?:予定していた休みに、急な用事を頼まれた。
どう感じた?:断りにくくて困った。少し疲れていた。
本当はどうしてほしかった?:引き受けられるか、先に確認してほしかった。
今の自分に必要なことは?:今日は返事を急がず、休む時間を確保したい。
一行だけの日は、「今日は疲れている」「話を聞いてほしかった」と書くだけでも構いません。後から読み返したくなければ、保存せず消しても大丈夫です。
書くのがつらいときは、いったんやめてよい
気持ちを言葉にする方法が、いつでも自分に合うとは限りません。書いているうちにつらさが増すなら、途中でやめてください。無理に理由を掘り下げたり、毎日続けたりする必要はありません。
怒りが強く、今は気持ちを整理するより先に落ち着く必要がある場合は、まず自分や周囲の安全を確保してください。その場での対処は、イライラしたときの対処法10選|今すぐできる落ち着き方と避けたい行動で紹介しています。
つらさが続くときや、一人では抱えきれないと感じるときは、信頼できる人や相談窓口に話してよいのです。話す内容を整理できていなくても、「うまく説明できないけれど、つらい」と伝えるところから始められます。
まとめ|「嫌だった」の一言から始めよう
ストレスを言語化するときは、きれいに書こうとしなくて大丈夫です。「何が起きたか」「どう感じたか」「本当はどうしてほしかったか」を、書ける範囲で分けてみてください。
気持ちに合う言葉が見つからない日もあります。短いメモで終える、書かずに休む、人に相談するなど、そのときの自分に合う方法を選んでください。