家事が思うように進まず、ついイライラする。パソコン作業が続いて、体まで固まったように感じる。「落ち着こう」と思っても、すぐには気持ちが変わらないこともあります。
そんなときは、作業をいったん止め、無理のない範囲で体を動かす休憩を取ってみませんか。着替えたり、すべての動きをこなしたりする必要はありません。
この記事では、家事や仕事の合間に取り入れやすいストレッチを4つ紹介します。イライラを必ず消す方法ではありませんが、同じ姿勢を中断するきっかけにできます。今の体に合いそうなものを、一つ選ぶだけでもかまいません。
イライラしたときのストレッチは、作業を区切る休憩に
「気持ちを切り替えなければ」と頑張る前に、まず手を止めてみましょう。洗い物の途中なら安全に区切れるところまで、仕事中なら入力や確認を終えたところで、少し作業から離れます。
ストレッチをしても、嫌だった出来事や仕事の量が変わるわけではありません。気分が変わらない日もあります。「落ち着けたかどうか」を採点せず、休むための選択肢として使ってください。
体を動かす以外の方法も知りたいときは、イライラしたときの対処法10選で、その場の状況に合わせた対処を紹介しています。
始める前に、安全と体調を確かめる
- 火・刃物・機械を使う作業は、安全に止めてから行います。
- 子どもの見守りや介助中は、相手の安全を確保します。抱っこしたままのストレッチは避けましょう。
- 椅子はキャスターのない安定したものを選び、足裏が床につくように座ります。
- 周囲に腕や脚を動かせる空間があるか確認します。
- 反動をつけず、息を止めず、痛みのない範囲でゆっくり動きます。
けがや持病がある方、治療中の方、妊娠中など運動について確認が必要な方は、医療者に相談してください。痛いところをストレッチで治そうとせず、体調が悪い日は休みましょう。
痛み・しびれ・めまい・息苦しさが出たら中止してください。症状が続く場合は、医療機関に相談しましょう。
家事・仕事の合間にできる、やさしいストレッチ4つ
以下は、国立長寿医療研究センターの「いつでもHEPOP バランス向上パック」を参考に、休憩で選びやすい形に整理した動きです。元の資料には複数回の実施例がありますが、ここでは負担を増やさないよう、まず各1回を試す提案にしています。時間は目安で、つらくなるまで続ける必要はありません。
1.胸まわりを、ゆっくり開く
パソコンや手元を見続けた後に。安定した椅子に座り、両足裏を床につけて始めます。
- 背すじを自然に伸ばし、腕を体の横に下ろします。
- 両腕を、痛みのない高さでゆっくり左右に開きます。
- 胸の前が軽く伸びる位置で止め、自然に呼吸します。
- まず10秒ほどを目安に保ち、腕をゆっくり下ろします。
腕を後ろへ強く引かず、腰を反らして胸を突き出さないようにしましょう。肩や背中に痛みが出る場合は行いません。首を回す動きは加えなくて大丈夫です。
2.腕と背中を、上へ伸ばす
書類整理や洗濯物たたみなど、手元の作業を区切ったときに。椅子に安定して座って行います。
- 体の前で両手を軽く組みます。
- 手のひらを上へ向けながら、両腕をゆっくり持ち上げます。
- 上げられる範囲で止め、腕から背中の伸びを感じます。
- まず10秒ほどを目安に保ち、腕をゆっくり戻します。
肘は無理に伸ばし切らず、肩を痛めない高さにとどめます。腰を反らしたり、腕を耳の横まで押し上げたりする必要はありません。肩や腕に痛みがある方は、この動きを省いてください。
3.座って、太ももの裏を軽く伸ばす
座り仕事が続いた後に。椅子の端へ浅く座りすぎず、お尻が座面に安定して乗る位置を選びます。
- 片足を少し前へ出し、かかとを床につけます。反対の足裏は床につけておきます。
- 前へ出した脚の膝を、無理のない範囲で伸ばします。
- 背中を大きく丸めず、股関節から体を少し前へ傾けます。
- 太ももの裏が軽く伸びる位置で15秒ほどを目安に保ち、ゆっくり戻します。反対側も同様に行います。
つま先に手を届かせようとしなくてかまいません。膝を強く押さえたり、体を深く倒したりしないでください。背中・腰・膝に痛みがある場合は省きましょう。
4.壁に手を添えて、ふくらはぎを伸ばす
立ち作業を区切ったときに。滑りにくい床で、安定した壁に両手を添えます。立つことに不安がある場合は行わなくて大丈夫です。
- 片足を前、もう片足を後ろへ、小さく開きます。つま先は両方とも正面へ向けます。
- 後ろのかかとを床につけ、後ろ脚の膝を無理のない範囲で伸ばします。
- 前の膝をゆっくり曲げ、後ろ脚のふくらはぎが軽く伸びる位置で止めます。
- 15秒ほどを目安に保ち、ゆっくり戻します。足を入れ替えて反対側も行います。
足幅を大きくしすぎず、壁に体を押しつけるほど前へ倒れないようにしましょう。かかとが浮くなら足幅を狭めます。膝や足首に痛みがある場合は中止してください。
生活の中では「一つだけ」で取り入れてよい
家事の合間は、安全に区切れるところで
洗濯物をたたみ終えた後に胸を開くなど、作業の切れ目を使います。調理中は火を止め、熱い鍋や刃物から離れてください。家事を急いで終わらせてから運動する、という新しい負担を作る必要はありません。
仕事中は、画面や入力からいったん離れる
入力しながら片手で伸ばすのではなく、手を止めてから行います。椅子が動きやすい、周囲が狭いなどのときは、休憩できる場所へ移ってからにしましょう。休憩の取り方は、業務状況や職場のルールに合わせてください。
夜は、疲れに合わせて省略する
家事を終えた後は、座ってできる動きを一つ選ぶ程度でも十分です。眠い、だるい、動きたくないと感じるなら、そのまま休む選択もできます。毎日の回数を決めて、できなかった自分を責めなくてかまいません。
少し休憩したいときの伝え方
周囲に一言伝えるなら、今の状態や、必要に応じて再開する目安を短く添えます。イライラの理由を、その場ですべて説明する必要はありません。
家族に、家事を中断すると伝える
少し体を動かしてから、続きをするね。
今は会話する余裕がないと伝える
今ちょっと余裕がないから、少し休んでから話してもいい?
職場で、短い休憩を相談する
少し休憩を取ってもよろしいでしょうか。戻ったら、資料の確認を続けます。
急ぎかどうかを確認してから休む
今すぐ対応が必要ですか。急ぎでなければ、休憩後に確認してもよいでしょうか。
再開する時間を約束しにくい場合は、無理に「すぐ戻る」と言わず、戻れる見通しがついてから伝えてもかまいません。
ストレッチをしても、気分が変わらないときは
体を動かしてもイライラが残るからといって、やり方が悪かったわけではありません。睡眠が足りない、頼まれごとが多い、休める時間がないなど、気持ちだけでは変えにくい負担もあります。
「今夜の家事を一つ減らす」「締め切りや優先順位を相談する」「手伝ってほしい作業を一つ伝える」など、負担そのものを減らす方法も考えてみましょう。すぐに解決策を出せなくても大丈夫です。
何がつらいのか整理したいときは、ストレスを言語化するコツと例文で紹介している、出来事・気持ち・望みを分けて書く方法も選択肢になります。
イライラやつらさが続く、眠れない、家事や仕事に支障が出るといった場合は、一人で対処し続けず、かかりつけ医や心の健康に関する相談窓口などに相談してください。
今の体に合う動きを、一つ選ぶところから
家事や仕事の合間のストレッチは、「落ち着かなければ」と自分を急かすためのものではありません。安全に手を止め、胸や腕、脚を痛みのない範囲で動かす休憩として取り入れてみてください。
全部行わなくても、気分が変わらなくてもかまいません。動くより休みたい日は休むことも含めて、今の自分に合う方法を選んでいきましょう。
参考情報
- 国立長寿医療研究センター「いつでもHEPOP バランス向上パック」(PDF):胸・腕と背中・太ももの裏・ふくらはぎの動きと注意点を参照。本文では休憩用に実施回数を減らす提案をしています。
- 厚生労働省「職場における腰痛予防対策の推進について」:反動をつけない、呼吸を止めない、痛みのない範囲で行うといった基本的な注意点を参照。