「人前で繰り返し怒鳴られる」

「自分だけ無視される」「必要な情報を共有してもらえない」など、職場のパワハラやいじめに悩んでいませんか。

看護師の仕事では、患者の安全を守るために厳しい指導が必要になる場面もあります。

しかし、業務上必要な範囲を超えた叱責や人格否定、仲間外しなどまで我慢し続ける必要はありません。

被害を受けているときは、自分を責めるのではなく、心身の安全を確保したうえで記録を残し、信頼できる人や相談窓口につなげることが大切です。

院内での解決が難しい場合は、異動・休職・転職によって環境を変える方法もあります。

この記事では、看護師のパワハラ・いじめに該当する可能性がある行為、被害を受けたときの対処法、相談先、転職でつらい環境から抜け出すためのポイントを解説します。

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この記事でわかること

この記事では、パワハラやいじめから自分を守り、今後の働き方を考えるために必要なポイントを確認できます。

  • 看護師の職場で起こり得るパワハラ・いじめの具体例
  • 被害を受けたときに優先したい安全確保と証拠の残し方
  • 院内外で利用できる相談先と受診を検討する目安
  • 異動・休職・転職を判断するポイントと職場選びの注意点

看護師のパワハラ・いじめとは

つらい言動を受けても、「自分の受け取り方が悪いのではないか」「看護の現場では仕方がない」と考え、被害を抱え込んでしまう人がいます。

まずは、業務上必要な指導とパワハラ・いじめの違いを整理しましょう。

職場のパワハラを判断する3つの要素

厚生労働省では、職場のパワーハラスメントを、次の3つの要素をすべて満たすものとしています。

  • 優越的な関係を背景とした言動である
  • 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動である
  • 労働者の就業環境が害される言動である

優越的な関係とは、上司と部下だけに限りません。集団で一人を無視する場合や、業務上必要な知識を持つ同僚から協力を得られない場合なども、状況によって該当する可能性があります。

一方、患者の安全を守るために必要な注意や、適切な手順に基づく指導が直ちにパワハラになるわけではありません。

言動の目的、内容、回数、継続期間、周囲の状況などを含めて判断する必要があります。

看護師の職場で起こり得る具体例

パワハラやいじめは、怒鳴る行為だけではありません。

職場では、次のような形で現れることがあります。

  • 患者や同僚の前で繰り返し怒鳴る、侮辱する
  • 「看護師に向いていない」など、人格や能力を一方的に否定する
  • 特定の看護師だけを無視し、申し送りや必要な情報を伝えない
  • 一人では処理できない量の業務を意図的に割り振る
  • 経験に見合わない仕事を説明や支援なしで任せ、失敗を責める
  • 仕事を与えず、役割や成長の機会を不当に奪う
  • 休憩時間や休日の過ごし方など、私生活へ過度に干渉する
  • 退職や異動を強要するような言動を繰り返す

実際にパワハラへ該当するかどうかは個別の状況によって異なります。

しかし、該当するか判断できない段階でも、つらさを我慢せず相談して構いません。

業務指導との違いを考えるポイント

指導とパワハラを見分けるときは、「厳しく言われたか」だけでなく、目的や方法が適切だったかを確認します。

  • 患者の安全や業務改善という明確な目的があるか
  • 人格ではなく、改善が必要な行動を具体的に伝えているか
  • 人前で長時間叱責するなど、必要以上の方法になっていないか
  • 特定の人だけを狙って繰り返していないか
  • 改善方法や教育、支援が示されているか

たとえ業務上の注意が必要な場面でも、人格否定や威圧、見せしめのような叱責まで正当化されるわけではありません。

パワハラ・いじめを受けたときに最初にすること

被害を受けているときは、相手を説得することより、自分の安全と健康を守ることを優先します。

すぐに退職するかどうかを決められなくても、できる対策から始めましょう。

身の危険を感じたらその場を離れる

暴力、物を投げる行為、強い脅迫などがあり、身の危険を感じる場合は、その場から離れて安全を確保してください。自分一人で相手へ立ち向かう必要はありません。

責任者、警備担当者、家族などへ助けを求め、差し迫った危険がある場合は警察などの公的機関への相談も検討します。

日時・場所・言動を記録する

相談するときに事実関係を説明できるよう、被害の内容を記録しておきましょう。

感想だけでなく、できるだけ具体的な事実を残すことが重要です。

  • 起きた日時と場所
  • 相手の氏名や立場
  • 言われた言葉や行われたこと
  • その場にいた人
  • 自分がどのように対応したか
  • 業務や心身にどのような影響が出たか

メール、チャット、勤務表、業務指示書なども、事実確認に役立つ場合があります。

職場のルールや患者の個人情報に注意し、業務上の機密情報を私物端末へ無断で持ち出さないようにしてください。

一人で相手へ抗議するかは慎重に判断する

相手へ意思を伝えることで改善する場合もありますが、上下関係や相手の性格によっては、行為が悪化する可能性もあります。

恐怖を感じる場合や、過去に話し合いが成立しなかった場合は、一人で抗議せず、上司、人事担当者、労働組合などの第三者を通じて対応するほうが安全です。

信頼できる人へ早めに相談する

被害が続くと、「自分にも原因がある」と思い込み、正常な判断が難しくなることがあります。

信頼できる同僚、家族、友人などへ状況を話し、一人で抱え込まないようにしましょう。

職場の人間関係全般に悩んでいる場合は、看護師の人間関係がつらい時の対処法も参考にしてください。

パワハラ・いじめの相談先

院内で相談しにくい場合や、相談しても対応してもらえない場合は、職場の外にも相談先があります。

相談したからといって、すぐに退職や法的手続きを決める必要はありません。

上司・看護部・人事など院内の相談先

直属の上司が加害者でない場合は、まず上司へ相談する方法があります。

直属の上司が加害者である場合や相談しにくい場合は、さらに上の管理職、看護部、人事、コンプライアンス窓口などを利用します。

相談するときは、記録をもとに事実を時系列で説明し、「行為をやめてほしい」「勤務場所を分けてほしい」「異動を検討してほしい」など、希望する対応も伝えましょう。

労働組合や職員相談窓口

勤務先や加入している団体に労働組合がある場合は、相談できることがあります。

職場との話し合いへ同席してもらえるか、利用条件を確認してください。

院内に相談窓口が設けられている場合も、相談方法、秘密保持の範囲、相談後の対応手順を確認してから利用すると安心です。

総合労働相談コーナー

厚生労働省の総合労働相談コーナーでは、いじめ・嫌がらせやパワハラを含む幅広い労働問題について、電話または面談による相談を受け付けています。

相談は無料で、必要に応じて助言・指導やあっせんなどの制度も案内されます。

職場だけで解決することが難しい場合は、勤務先を管轄する労働局などの窓口を確認しましょう。

心身に症状がある場合は医療機関へ相談する

眠れない、食欲がない、出勤前に動悸や吐き気がする、涙が止まらないなどの症状がある場合は、無理を続けず医療機関へ相談してください。

厚生労働省のこころの耳「パワハラに関してまとめたページ」では、パワハラとメンタルヘルスに関する情報や相談窓口を確認できます。

すでに心身が限界に近いと感じている場合は、看護師のメンタルが限界のときに確認したいサインも併せて確認してください。

異動・休職・転職を検討する判断基準

相談したからといって、必ず職場へ残らなければならないわけではありません。

院内で改善できる可能性と、今の環境へ残ることによる心身への影響を比較して判断しましょう。

院内異動で加害者と離れられる場合

病棟や部署を異動することで、加害者との接触を減らせる場合があります。

仕事内容や勤務条件を大きく変えずに環境を変えられることは、院内異動のメリットです。

ただし、異動先でも同じ相手と関わる可能性があるか、ハラスメントに対して病院全体が適切に対応しているかを確認する必要があります。

心身の回復を優先したい場合

体調が悪化しているときは、転職活動を急ぐより、休職や有給休暇などを利用して回復を優先する方法もあります。

休職できる条件、期間中の賃金や社会保険の扱い、必要な手続きは勤務先の就業規則によって異なります。

人事担当者や加入している健康保険の窓口などへ確認しましょう。

相談しても改善されない場合

相談後も行為が続く、相談内容が加害者へ不用意に伝わる、報復的な扱いを受けるなど、職場の対応に問題がある場合は、環境そのものを変えることも検討します。

事業主には、職場のパワハラを防止するための措置を講じることが求められています。

また、相談したことや事実確認へ協力したことを理由とする不利益な取り扱いは禁止されています。

患者の安全にも影響が出ている場合

申し送りを意図的に外される、必要な情報が共有されない、質問できない雰囲気があるなど、いじめやパワハラが患者の安全に影響している場合は、個人間の問題だけでは済みません。

インシデントにつながる可能性があるときは、院内の安全管理担当者や管理職などへ、患者の安全に関わる事実として報告することも大切です。

退職を考えるほどつらい場合

職場へ向かうだけで強い苦痛を感じる場合や、改善の見込みがない場合は、転職を選んでも構いません。

環境を変えて自分の健康と看護師としてのキャリアを守ることは、逃げではありません。

続けるか辞めるか決められない場合は、看護師を続けるか辞めるか迷ったときの判断ポイントも参考にしながら、残る条件と離れる条件を整理しましょう。

転職でパワハラ・いじめのある職場から抜け出す方法

転職を決めた場合は、焦って次の職場を選ぶと、勤務条件や人間関係を十分に確認できないことがあります。

今の職場で何がつらかったのかを整理し、同じ問題を繰り返さない職場を探しましょう。

転職理由を自分の中で整理する

転職理由を整理するときは、加害者への不満だけでなく、次の職場で実現したい働き方へ置き換えて考えます。

  • 質問や相談がしやすい職場で働きたい
  • 教育担当者や指導方法が明確な職場を選びたい
  • 人員配置に余裕がある職場を探したい
  • 残業や夜勤の負担を減らしたい
  • ハラスメント相談窓口が機能している職場を選びたい

希望条件が明確になると、求人を比較するときの基準を作りやすくなります。

面接では前職への批判だけにしない

面接で転職理由を聞かれたときに、パワハラの詳細や相手への批判を長く話すと、採用担当者へ意図が正確に伝わらない場合があります。

事実を簡潔に説明したうえで、「相談しながら安全に働ける環境で経験を生かしたい」など、今後の働き方へつなげて伝えるとよいでしょう。

ただし、体調や勤務上の配慮について確認され、入職後の業務に関係する場合は、無理に隠さず必要な範囲で説明することが大切です。

職場見学で現場の雰囲気を確認する

求人票だけでは、人間関係や指導方法の実態までは分かりません。

可能であれば職場見学を行い、看護師同士の話し方や管理職の対応を確認しましょう。

  • 職員同士が挨拶をしているか
  • 質問した職員へ威圧的な対応をしていないか
  • 忙しい時間帯でも声を掛け合っているか
  • 見学者への説明が具体的で誠実か
  • 新人や中途採用者の教育方法が決まっているか

短時間の見学だけで人間関係を断定することはできませんが、違和感を覚えた点は入職前に確認しておきましょう。

第三者から職場情報を集める

自分で職場へ聞きにくい内容は、転職サービスの担当者を通じて確認する方法があります。

過去の退職理由、教育体制、残業の実態などについて、確認できる範囲を尋ねてみましょう。

ただし、転職サービスでも職場のすべてを把握しているとは限りません。

担当者の説明だけで判断せず、求人票、面接、職場見学など複数の情報を組み合わせることが大切です。

転職先を選ぶときの固定チェックリスト

人間関係の良さだけを求人票から判断することは難しいため、職員が無理なく働ける勤務体制や教育環境も確認しましょう。

次の7項目を、応募前や面接時に確認します。

  • 月平均の残業時間
  • 夜勤回数
  • オンコールの有無と頻度
  • 有給休暇の取得率
  • 離職率
  • 人員配置
  • 教育・研修体制

特に離職率、人員配置、実際の残業時間、教育方法は、求人票だけでは分からないことがあります。

面接や職場見学で質問するほか、転職サービスの担当者へ確認を依頼する方法もあります。

転職先で同じ悩みを繰り返さないための確認事項

次の職場では、相談窓口が存在するかだけでなく、問題が起きたときに実際に対応できる仕組みがあるかを確認することが大切です。

中途採用者の教育方法

教育担当者が決まっているか、経験に応じた研修期間があるか、質問する相手が明確かを確認します。

指導方法が担当者任せになっている職場は、入職後の負担が大きくなる可能性があります。

相談経路と管理職の対応

困ったときに誰へ相談すればよいか、直属の上司以外にも相談できるかを確認しましょう。

相談窓口の連絡方法や、プライバシーへの配慮について質問しても構いません。

人員配置と業務量

慢性的な人手不足や過度な業務負担があると、職員同士に余裕がなくなり、教育やコミュニケーションへ影響する場合があります。

配置人数だけでなく、欠員時の応援体制、休憩の取り方、残業が発生する主な理由なども確認しましょう。

離職理由や定着状況

離職率の数値が確認できない場合でも、中途採用者がどのくらい定着しているか、最近の退職理由に共通点があるかを質問できます。

回答が曖昧であることだけで問題のある職場とは断定できませんが、複数の質問への対応を含めて判断材料にしましょう。

看護師のパワハラ・いじめに関するよくある質問

ここでは、被害を受けている看護師が抱きやすい疑問について、判断するときのポイントを回答します。

Q1. 証拠がなくても相談できますか?

証拠がそろっていなくても相談できます。

まずは覚えている範囲で、日時、場所、相手の言動、目撃者、心身や業務への影響を書き出しましょう。

今後の出来事を継続して記録することも大切です。

Q2. 厳しい指導はすべてパワハラになりますか?

厳しい指導がすべてパワハラになるわけではありません。

患者の安全や業務改善のために必要で、方法や程度が相当な範囲に収まっているかが重要です。

人格否定や見せしめ、長時間の叱責などは、業務指導として適切かを慎重に確認する必要があります。

Q3. 相談したことを相手に知られるのが怖い場合はどうすればよいですか?

相談前に、秘密保持の範囲や相手へ伝える内容を確認しましょう。

院内で相談しにくい場合は、総合労働相談コーナーなど、職場外の窓口へ先に相談する方法があります。

Q4. パワハラが原因で転職すると面接で不利になりますか?

パワハラを理由に転職することだけで、必ず不利になるとは限りません。

面接では前職への批判を中心にせず、事実を簡潔に伝え、今後希望する働き方や応募先で生かせる経験へ話をつなげましょう。

Q5. 退職してから転職活動を始めても大丈夫ですか?

心身の回復を優先する必要がある場合は、退職後に転職活動を始める選択肢もあります。

一方、収入や社会保険の切り替えも関係するため、体調、生活費、利用できる制度などを確認して判断してください。

まとめ

看護師の職場で受ける人格否定、無視、過大な業務の強要、必要な情報の遮断などは、状況によってパワハラやいじめに該当する可能性があります。

「自分が我慢すればよい」と抱え込まず、事実を記録し、信頼できる人や相談窓口へつなげましょう。

院内相談や異動で改善できる場合もありますが、心身の不調が続く、相談しても改善されない、患者の安全へ影響しているといった場合は、休職や転職を検討することも必要です。

転職は、つらい環境から逃げるだけの行動ではありません。

自分の健康と看護師としてのキャリアを守り、安心して働ける環境を選び直すための方法の一つです。