オンライン診療や遠隔医療が活用されるなか、パソコンやタブレットを使って患者を支援する看護師の仕事に関心を持つ人もいるでしょう。
病棟勤務と比べて身体的な負担を抑えやすい印象がありますが、仕事内容は問診の確認、診療の準備、患者への操作説明、療養指導など勤務先によってさまざまです。
また、オンライン診療の仕事だからといって、必ず在宅勤務ができるとは限りません。
転職するときは、勤務場所だけで判断せず、看護師が担当する業務範囲や緊急時の対応、研修体制、個人情報の管理方法まで確認することが大切です。
この記事では、オンライン診療・遠隔医療で働く看護師の仕事内容、向いている人、転職時の注意点、求人の探し方と将来性を解説します。
この記事でわかること
オンライン診療・遠隔医療で働く看護師への転職を考える際に、確認しておきたいポイントをまとめました。
- オンライン診療・遠隔医療で看護師が担当する仕事内容
- 働くメリット・注意点と向いている人の特徴
- 未経験から転職するときに必要なスキル
- 求人選びのポイントと今後の将来性
オンライン診療・遠隔医療とは
オンライン診療とは、スマートフォン、タブレット、パソコンなどの情報通信機器を使い、患者が自宅などにいながら医師の診察を受ける方法です。
遠隔医療はオンライン診療よりも広い概念で、医療従事者間の遠隔相談や遠隔モニタリングなども含まれます。
厚生労働省は、オンライン診療について、対面診療と適切に組み合わせて実施することを基本としています。
画面越しでは触診などができず、得られる情報に限りがあるため、患者の状態によっては対面診療へ切り替える必要があります。
看護師が働く場としては、オンライン診療を導入している病院・クリニック、訪問看護事業所、医療相談サービス、健康管理サービス、オンライン診療システムを運営する企業などが考えられます。
オンライン診療と遠隔健康医療相談の違い
オンライン診療は医師が診察や医学的判断を行うものであり、遠隔健康医療相談は、相談者の個別の状態を踏まえた診断や処方を行わず、一般的な情報提供や受診の案内などを行うものです。
看護師が電話やチャットで健康相談を担当する求人でも、診断を行うことはできません。
勤務先のマニュアルや医師への報告基準に従い、看護師として担当できる範囲を守る必要があります。
患者のそばで診療を支援する働き方もある
遠隔医療には、患者のそばに看護師が付き添い、離れた場所にいる医師のオンライン診療を支援する形があります。
厚生労働省の資料では「D to P with N」と表され、看護師が通信機器の操作を支援したり、医師の指示に基づいて診療の補助を行ったりする場合があります。
この働き方では、訪問看護や地域医療の経験、患者の小さな変化を把握する観察力、医師へ正確に報告する力が役立ちます。
オンライン診療で働く看護師の仕事内容
看護師の仕事内容は、医療機関がオンライン診療をどのように運用しているかによって異なります。
患者対応だけでなく、システム操作や事務的な調整を担当する求人もあるため、応募前の確認が欠かせません。
診療前の問診内容と患者情報の確認
患者が事前に入力した問診内容、既往歴、服薬状況、アレルギー、現在の症状などを確認します。
確認が必要な項目があれば、診療前に患者へ追加で聞き取り、医師が判断しやすいように情報を整理します。
画面越しでは患者の状態を把握しにくい部分があるため、症状の経過や呼吸状態、意識状態などから緊急性を見落とさない観察力が求められます。
オンライン診療システムの準備と接続支援
診療前にカメラ、マイク、通信環境などを確認し、患者と医師が接続できるように準備します。
操作に慣れていない患者へ、ログイン方法や画面の使い方を説明することもあります。
通信が途切れた場合の連絡方法や、システム障害が起きた場合の対応手順も理解しておく必要があります。
高度なIT資格が必須とは限りませんが、基本的なパソコン操作に抵抗がないことは重要です。
医師の診療補助と情報共有
診療中は必要に応じて看護師が同席し、患者情報の補足、電子カルテへの記録、医師からの説明の補助などを行います。
患者のそばに看護師がいる場合は、医師の指示を受けて状態確認や診療の補助を担当することもあります。
どこまで担当するかは勤務先の体制や看護師の配置場所によって異なります。
業務手順と責任の範囲が明確になっている職場を選びましょう。
診療後の療養指導と受診案内
医師の診療後に、服薬方法、生活上の注意点、次回受診の流れなどを患者へ説明します。
対面診療が必要と判断された場合は、受診できる医療機関や連絡方法を案内することもあります。
患者が説明内容を正しく理解できているか確認し、必要な情報を簡潔に伝えるコミュニケーション能力が求められます。
予約・処方箋・薬局などとの連携
勤務先によっては、次回予約の調整、処方箋の送付確認、薬局との情報共有、支払い方法の説明などを担当します。
医療事務スタッフが担当する職場もあるため、看護業務と事務業務の割合を求人票や面接で確認することが大切です。
オンライン診療で働く看護師のメリット
オンライン診療の仕事には、病棟とは異なる働き方や患者支援を経験できるメリットがあります。
ただし、すべての求人に共通するとは限らないため、実際の勤務条件を確認して判断しましょう。
身体介助や移乗による負担を抑えやすい
オンライン上で問診や療養指導を行う仕事では、移乗介助、入浴介助、長時間の立ち仕事などが少ない傾向があります。腰痛や体力面に不安を感じている看護師にとっては、働き方を見直す選択肢の一つです。
ただし、訪問看護とオンライン診療を組み合わせる職場では、訪問や身体的なケアを担当する場合があります。体力的な負担を減らしたい人は、看護師を辞めたいと感じたときの限界サインも確認し、現在の負担を整理してみましょう。
日勤中心の求人を探せる可能性がある
予約制のオンライン診療では、日勤を中心とした勤務先もあります。
夜勤のある病棟から働き方を変えたい看護師には、生活リズムを整えやすい可能性があります。
一方、夜間の健康相談や24時間対応のサービスでは、夜勤・準夜勤・土日勤務が設定されることがあります。
「オンラインだから日勤のみ」と決めつけず、対応時間とシフトを確認してください。
新しい医療サービスの運用を経験できる
オンライン診療システム、電子カルテ、チャット、遠隔モニタリング機器などを使用するため、デジタル技術を活用した医療の経験を積めます。
患者への操作説明、医師や薬局との情報共有、業務手順の改善などを経験することで、医療機関だけでなくヘルスケア企業や医療関連サービスへのキャリアを考える際にも役立つ可能性があります。
患者の継続的な療養を支援できる
通院に伴う移動が難しい患者や、継続的な治療が必要な患者に対して、オンライン診療は受診負担を軽減する選択肢になります。
看護師は、患者が安心して診療を受けられるように情報を整理し、診療後の療養生活を支える役割を担います。
対面とは異なる方法で患者との信頼関係を築く経験ができます。
オンライン診療で働くときの注意点
身体的な負担を抑えやすい一方で、画面越しの観察や通信機器の操作など、オンライン診療特有の難しさがあります。
転職後のミスマッチを防ぐため、メリットだけでなく注意点も確認しましょう。
画面越しでは患者の状態を把握しにくい
オンラインでは、触診や直接的な身体観察ができず、表情、声、問診内容など限られた情報から患者の状態を捉えます。
カメラの画質や照明、通信状況によっても見え方が変わります。
異常が疑われる場合に、医師へ速やかに報告し、対面診療や救急受診につなげる判断基準が整備されているか確認することが重要です。
在宅勤務とは限らない
オンライン診療に関わる仕事でも、病院やクリニックへの出勤が必要な求人は少なくありません。
電子カルテの操作や患者情報の管理、医師との連携を院内で行う場合があるためです。
在宅勤務を希望する場合は、完全在宅、週の一部のみ在宅、研修期間後に在宅勤務へ移行など、勤務場所の条件を詳しく確認しましょう。
電話・チャット対応が多い場合がある
勤務先によっては、映像を使った診療補助よりも、予約調整、電話相談、チャットへの返信、診療後の案内などが業務の中心になることがあります。
臨床看護を中心に働きたい人は、想像していた仕事内容と異なる可能性があります。
1日の対応件数や、看護業務と事務業務の割合を面接で確認してください。
個人情報と情報セキュリティへの配慮が必要
オンライン診療では、患者の氏名、症状、診療記録などの重要な情報を取り扱います。
画面ののぞき見、誤送信、端末の紛失、アカウントの不正利用などを防ぐ知識と慎重な操作が欠かせません。
在宅勤務の場合は、業務用端末の貸与、通信環境、家族から画面や会話が見聞きされない場所の確保、記録の保管方法なども確認しましょう。
求人が限られ、応募条件が異なる
オンライン診療専任の看護師求人は、一般的な病棟求人と比べて見つけにくい場合があります。
また、臨床経験年数、特定診療科の経験、電話相談経験、パソコンスキルなどを応募条件とする求人もあります。
未経験から応募できるかどうかは、募集状況と受け入れ体制によって異なります。
求人票に「未経験可」と書かれていても、研修期間や相談できる体制を確認しましょう。
オンライン診療の仕事に向いている看護師
オンライン診療では、臨床経験だけでなく、限られた情報を整理する力や、相手に分かりやすく伝える力が重視されます。
次の特徴に当てはまる人は、経験を活かしやすいでしょう。
- 問診や電話対応を通じて必要な情報を整理できる
- 患者の声や表情の変化を丁寧に観察できる
- 医師へ簡潔かつ正確に報告できる
- パソコンや新しいシステムの操作に抵抗がない
- 個人情報を慎重に取り扱える
- 患者へ落ち着いて操作方法や療養上の注意を説明できる
- 業務マニュアルや対応範囲を守って行動できる
反対に、直接的な看護ケアを中心に働きたい人や、パソコン操作が大きなストレスになる人は、仕事内容を十分に確認する必要があります。転職するか迷う場合は、看護師を続けるか辞めるか迷ったときの判断ポイントを参考に、希望する働き方を整理してみてください。
未経験から転職するために身につけたいスキル
オンライン診療の経験がなくても応募できる求人はありますが、採用条件や教育体制は勤務先ごとに異なります。
未経験者は、臨床経験をどのように活かせるかを説明できるように準備しましょう。
問診力とトリアージの基礎
患者の訴えから、症状が始まった時期、程度、経過、服薬状況、随伴症状などを順序立てて確認する力が必要です。
看護師だけで診断するのではなく、どの情報を医師へ報告するか、どのような状態で緊急対応へ切り替えるかを、勤務先の基準に沿って判断する力が求められます。
分かりやすく説明するコミュニケーション力
オンラインでは、患者が画面操作や診療の流れに不安を感じる場合があります。
専門用語を使いすぎず、短い言葉で順序立てて説明する力が必要です。
電話では相手の表情が見えないため、声の調子を確認しながら理解度を確かめることも大切です。
基本的なパソコン操作
文字入力、電子カルテへの記録、オンライン会議システム、チャット、メールなどの基本操作が必要です。複数の画面を確認しながら入力する職場もあります。
特別なIT資格が必須とは限りませんが、操作上の問題が起きたときに手順書を確認し、担当部署へ状況を説明できる程度のスキルがあると安心です。
情報セキュリティに関する知識
患者情報を扱うため、パスワードの管理、端末のロック、誤送信の防止、画面や会話のプライバシー確保などを理解する必要があります。
入職時に情報セキュリティ研修があるか、定期的にルールを見直しているかも確認しましょう。
オンライン診療・遠隔医療の求人を探す方法
求人票では「オンライン診療看護師」という名称だけで募集されるとは限りません。
関連する複数の職種名やキーワードを使って探すと、候補を見つけやすくなります。
複数のキーワードで検索する
求人サイトでは、次のようなキーワードを組み合わせて検索してみましょう。
- オンライン診療 看護師
- 遠隔医療 看護師
- 医療相談 看護師
- 電話相談 看護師
- 健康相談 看護師
- 遠隔モニタリング 看護師
- 看護師 在宅勤務
- クリニック オンライン診療
- ヘルスケア企業 看護師
「在宅勤務」だけで検索すると、医療とは関係のない求人が多く表示される場合があります。
看護師資格や医療相談などの言葉も組み合わせることがポイントです。
転職サービスへ希望条件を具体的に伝える
一般には公開されていない求人や、オンライン診療を一部導入している医療機関が見つかる場合もあります。
転職サービスを利用するときは、「オンライン診療に関わりたい」と伝えるだけでなく、在宅勤務の希望、夜勤の可否、患者対応と事務業務の希望割合なども伝えましょう。
現在の職場を辞めてから探すか迷っている人は、看護師を辞めたいけれど次がないと不安なときの対処法も参考にしてください。
求人が限られる職種では、働きながら情報収集を始める方法もあります。
オンライン診療求人で確認したい7項目
オンライン診療の求人は、同じ職種名でも勤務場所や業務範囲が大きく異なります。
応募前または面接時に、次の項目を確認してください。
- 月平均の残業時間
- 夜勤回数
- オンコールの有無と頻度
- 有給休暇の取得率
- 離職率
- 看護師・医師・事務職員の人員配置
- オンライン診療、緊急対応、情報セキュリティに関する教育・研修体制
さらに、在宅勤務の可否、1日の対応件数、電話・チャット・映像対応の割合、事務業務の範囲、対面診療へ切り替える基準も確認しましょう。
求人票で分からない項目は、採用担当者や転職サービスの担当者へ質問することが大切です。
オンライン診療・遠隔医療で働く看護師の将来性
オンライン診療や遠隔医療は、通院が難しい患者の負担軽減、慢性疾患の継続的な支援、地域医療への活用などが期待されています。
遠隔モニタリングや医療従事者間の連携が広がれば、看護師が関わる仕事も多様になる可能性があります。
一方で、対面診療をすべて置き換えるものではありません。
医療上の安全性、患者のデジタル機器の利用環境、個人情報の保護、診療報酬、運用体制などの課題もあります。
そのため、将来性がある分野ではありますが、「今後必ず求人が急増する」「完全在宅勤務が一般的になる」とは断定できません。
臨床判断を支える観察力とデジタルスキルの両方を身につけ、変化へ対応できる看護師は活躍の場を広げやすいでしょう。
よくある質問
オンライン診療・遠隔医療で働く看護師への転職について、よくある疑問をまとめました。
Q1. オンライン診療の看護師は完全在宅で働けますか?
完全在宅の求人もありますが、すべての職場で在宅勤務ができるわけではありません。
医療機関への出勤が必要な求人や、研修期間中は出勤する求人もあります。
勤務場所、出勤頻度、業務用端末の貸与条件を確認してください。
Q2. オンライン診療未経験でも転職できますか?
未経験から応募できる可能性はあります。
ただし、必要な臨床経験、診療科経験、パソコンスキル、電話相談経験などの条件は勤務先によって異なります。
未経験者向けの研修と相談体制があるか確認しましょう。
Q3. オンライン診療なら夜勤はありませんか?
日勤中心の求人はありますが、夜勤がないとは限りません。
24時間対応の医療相談サービスなどでは、夜間・土日・祝日のシフトが組まれる場合があります。
診療時間と勤務シフトの両方を確認してください。
Q4. オンライン診療の仕事に特別な資格は必要ですか?
看護師として採用される場合は、看護師免許が基本となります。
特別なIT資格が必須とは限りませんが、基本的なパソコン操作、情報セキュリティ、問診や報告のスキルが求められます。
応募先独自の条件も確認してください。
Q5. 病棟経験はオンライン診療でも役立ちますか?
病棟で身につけた観察力、問診力、緊急性の判断、医師への報告、療養指導などは役立ちます。
面接では、患者の変化に気づいた経験や、分かりやすく説明した経験を具体的に伝えるとよいでしょう。
まとめ
オンライン診療・遠隔医療で働く看護師は、問診内容の確認、システムの接続支援、医師の診療補助、療養指導、予約や薬局との連携などを担当します。
身体的な負担を抑えやすい可能性がある一方で、画面越しの観察力、パソコン操作、情報セキュリティへの配慮が必要です。
求人によって、在宅勤務の可否、勤務時間、患者対応と事務業務の割合、必要な臨床経験が異なります。
「オンライン診療」という名称だけで判断せず、実際の業務内容と教育体制を確認しましょう。
将来性が期待される分野ですが、対面診療をすべて置き換える働き方ではありません。
自分の臨床経験を活かせる業務か、希望する生活との両立ができるかを比較しながら、転職先を選ぶことが大切です。
参考資料
制度や業務内容は変更される可能性があるため、公開前および更新時には最新情報をご確認ください。