看護師として働くなかで、
「病気になった後の看護だけでなく、病気を予防する仕事に関わりたい」
「夜勤の少ない働き方へ変えたい」と考え、保健師への転職に興味を持つ方もいるでしょう。
保健師は、地域住民や企業の従業員、学生などを対象に、健康相談や保健指導、健康づくりの支援を行う専門職です。
看護師として培った観察力やコミュニケーション力を生かせる一方で、保健師として働くには所定の教育課程を修了し、国家試験に合格して免許を取得する必要があります。
また、保健師は夜勤がない職場も比較的見つけやすいものの、勤務先や雇用形態によって仕事内容や採用方法、年収は異なります。
看護師から転職すれば、必ず働きやすくなったり年収が上がったりするとは限りません。
この記事では、看護師から保健師への転職を考えている方へ、仕事内容、勤務先、年収、資格取得の方法、転職前の確認ポイントを分かりやすく解説します。
この記事でわかること
看護師から保健師への転職を考えるときに、最初に確認しておきたい内容をまとめています。
- 保健師の仕事内容と看護師との違い
- 行政・企業・学校など勤務先ごとの特徴
- 保健師の年収と看護師から転職した場合の変化
- 保健師資格を取得して転職するまでの流れ
看護師から保健師への転職は可能
看護師から保健師へ転職することは可能ですが、看護師免許だけで保健師として働けるわけではありません。
保健師の名称を用いて保健指導に従事するには、保健師免許が必要です。
保健師助産師看護師法では、保健師になるためには、保健師国家試験と看護師国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受ける必要があると定められています。
すでに看護師免許を持っている方は、保健師の教育課程を修了して国家試験に合格し、免許を申請する流れが基本です。
看護師経験は、住民や従業員の健康状態を把握する場面や、医療機関との連携、緊急時の判断などに生かせます。
ただし、募集先によって求められる臨床経験や実務経験は異なるため、「看護師経験があれば必ず採用される」とは限りません。
転職後の働き方を慎重に考えたい方は、看護師を続けるか辞めるか迷ったときの判断ポイントも参考にしてください。
保健師とはどのような仕事をする職種なのか
保健師は、個人だけでなく、地域や企業、学校などの集団全体を対象として、病気の予防や健康の維持・増進を支援する専門職です。
看護師が病気やけがのある患者への療養上の世話や診療の補助を中心に行うのに対し、保健師は健康相談、生活習慣の改善、疾病予防、地域の健康課題への対応などを行います。
健康相談と保健指導
保健師の代表的な仕事は、対象者の健康状態や生活状況を確認し、必要な保健指導を行うことです。
健診結果や既往歴、生活習慣、家庭環境などを確認し、食事、運動、睡眠、受診の必要性について助言します。
一方的に指導するのではなく、本人が無理なく健康行動を続けられるように支援する姿勢が求められます。
病気の予防と早期発見
保健師は、病気になる前の段階から対象者と関わり、健康上の問題を早期に見つける役割を担います。
特定健診やがん検診、乳幼児健診、メンタルヘルス相談などを通じて、治療や詳しい検査が必要な人を医療機関へつなぎます。
すでに治療を受けている人に対しては、治療を継続できるように支援することもあります。
家庭訪問と継続支援
行政保健師などは、必要に応じて対象者の自宅を訪問し、本人や家族の状況を確認します。
乳幼児のいる家庭、高齢者、障害のある人、療養中の人など、支援対象は勤務先によってさまざまです。
医療面だけでなく、介護、福祉、子育て、生活環境なども含めて課題を整理します。
関係機関との連携
保健師の仕事は、保健師だけで完結するものではありません。
医師、看護師、管理栄養士、社会福祉士、ケアマネジャー、学校関係者、企業の人事担当者などと連携します。
対象者に必要な支援を届けるためには、関係者との情報共有や会議、支援計画の作成、記録などの事務業務も重要です。
保健師と看護師の主な違い
保健師と看護師は、どちらも看護に関する専門知識を生かす職種ですが、主な対象者や仕事の目的、勤務場所などに違いがあります。
| 比較項目 | 保健師 | 看護師 |
|---|---|---|
| 主な対象 | 地域住民、従業員、学生など | 患者、療養者、家族など |
| 仕事の中心 | 予防、健康相談、保健指導 | 療養上の世話、診療の補助 |
| 主な勤務先 | 自治体、企業、健診機関、学校など | 病院、診療所、施設、訪問看護など |
| 勤務時間 | 日勤中心の職場が比較的多い | 病院では夜勤を含む場合がある |
| 必要な免許 | 保健師免許と看護師免許 | 看護師免許 |
保健師は日勤中心の求人が比較的多いものの、イベント対応、休日出勤、出張、繁忙期の残業などが発生する職場もあります。
勤務先の種類だけで働きやすさを判断せず、実際の勤務条件を確認することが大切です。
保健師の主な勤務先と仕事内容
保健師の仕事内容は、行政、企業、学校、医療機関など、勤務先によって大きく異なります。
自分が支援したい対象者や希望する働き方を考えながら選びましょう。
行政保健師
行政保健師は、保健所、市区町村の保健センター、地域包括支援センターなどで、地域住民の健康を支援します。
母子保健、成人保健、高齢者支援、精神保健、感染症対策、難病支援など、配属先によって担当分野が異なります。
家庭訪問、健康相談、健診、地域の健康課題の分析、事業の企画なども行います。
自治体の正規職員として働く場合は、公務員試験や自治体独自の採用試験が行われることがあります。
受験資格、年齢要件、試験内容、募集時期は自治体ごとに確認が必要です。
産業保健師
産業保健師は、企業や健康保険組合などで、従業員の健康管理を行います。
健康診断後の保健指導、長時間労働者への面談支援、メンタルヘルス対策、休職者の職場復帰支援、健康教育などが主な仕事です。
産業医、人事・労務担当者、管理職などとの連携も欠かせません。
企業によっては、保健師資格に加えて、産業保健の実務経験、パソコン操作、保健指導経験などが応募条件になることがあります。
求人数や募集時期には地域差があるため、未経験から必ず転職できるとは限りません。
学校保健師
学校や大学などで働く保健師は、学生や教職員の健康相談、健康診断、感染症対策、健康教育などを担当します。
勤務先によっては「学校保健師」「大学保健室職員」「健康管理室職員」など、異なる名称で募集されます。
また、養護教諭として働くには、原則として養護教諭免許状が必要です。
保健師免許だけで養護教諭として採用されるとは限らないため、募集要項を確認しましょう。
医療機関・健診機関の保健師
病院や健診センターで働く保健師は、健康診断後の保健指導、生活習慣病予防、受診勧奨、地域連携などを担当します。
勤務先によっては、採血や診療補助などの看護業務を兼務する場合があります。
「保健師採用」であっても、保健指導だけを担当するとは限りません。保健師業務と看護師業務の割合を確認しておくことが大切です。
看護師から保健師へ転職するメリット
保健師への転職には、予防分野へ仕事の幅を広げられることや、日勤中心の働き方を選びやすいことなどのメリットがあります。
ただし、すべての職場に当てはまるわけではありません。
病気の予防に関われる
保健師は、健康な段階や症状が重くなる前の段階から対象者を支援できます。
生活習慣の改善、健診後のフォロー、健康教育などを通じて、病気の予防や早期発見に関われることは、保健師ならではのやりがいです。
地域や集団全体を支援できる
保健師は、目の前の一人だけでなく、地域住民や企業の従業員など、集団全体の健康課題にも取り組みます。
相談内容や健診結果などから共通する課題を見つけ、健康教室や予防事業を企画することもあります。
個別支援と集団支援の両方に関わりたい方に向いています。
日勤中心の職場を探しやすい
自治体や企業、学校などでは、平日の日中を中心とした勤務が多く、病棟勤務に比べて夜勤のない求人を探しやすい傾向があります。
ただし、休日の健診、地域イベント、感染症対応、緊急連絡などが発生する可能性はあります。
夜勤がないことだけでなく、休日出勤や時間外対応の実態も確認しましょう。
看護師経験を生かせる
看護師として身につけた疾患や治療の知識、観察力、対人援助技術は、保健師業務でも役立ちます。
特に、対象者の健康状態を把握する力、受診の必要性を判断する力、多職種と連携する力は大きな強みです。
応募書類や面接では、臨床経験を保健師業務でどのように生かせるかを具体的に伝えましょう。
看護師から保健師へ転職するデメリットと注意点
保健師への転職では、資格取得に時間と費用がかかることや、希望する求人がすぐに見つからない可能性も理解しておく必要があります。
保健師資格の取得が必要になる
看護師免許だけでは、保健師として働くことはできません。
指定された学校や保健師養成所で必要な教育を受け、保健師国家試験に合格して免許を取得する必要があります。
通学中は、学費だけでなく、実習期間の収入減少や通学費、教材費なども考慮しなければなりません。
働きながら通えるかどうかも、学校ごとに確認が必要です。
求人が限られる場合がある
保健師の求人は、看護師求人と比べて募集先や採用人数が限られる地域があります。
特に産業保健師や学校勤務は、募集時期が不定期で、経験者が優先される場合もあります。
資格を取得すればすぐに希望の職場へ転職できるとは限らないため、複数の勤務先を候補にしておくと安心です。
事務作業や調整業務が多い
保健師は、健康相談や家庭訪問だけでなく、記録、データ集計、資料作成、会議、関係機関との連絡調整なども行います。
対象者と直接関わる時間だけを想像して転職すると、事務作業の多さに戸惑う可能性があります。
パソコン操作や文書作成、スケジュール管理も必要です。
看護師より年収が下がる可能性がある
保健師の勤務先には日勤中心の職場が多いため、病棟看護師として受け取っていた夜勤手当がなくなり、転職直後の年収が下がることがあります。
基本給だけで比較せず、賞与、残業代、住宅手当、扶養手当、退職金、昇給制度などを含めて確認しましょう。
転職後の収入や働き方が不安な方は、看護師を辞めたいけれど次の仕事がないと不安なときの考え方も参考にしてください。
保健師の年収はいくらなのか
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」では、令和7年賃金構造基本統計調査を基にした保健師の全国平均年収は551.4万円と掲載されています。平均年齢は42.4歳です。
ただし、この数値はすべての保健師が受け取れる年収を示すものではありません。
平均年収には経験を積んだ保健師も含まれており、転職直後の提示額とは異なります。
実際の年収は、次の条件によって変わります。
- 行政・企業・学校・医療機関など勤務先の種類
- 正職員、契約職員、パートなどの雇用形態
- 地域や勤務先の規模
- 保健師や看護師としての経験年数
- 基本給、賞与、残業代、各種手当
- 役職や担当業務
看護師から保健師へ転職する際は、平均年収だけで判断せず、現在の年収から夜勤手当や残業代を除いた金額とも比較しましょう。
日勤中心になることで収入が下がっても、生活リズムや休日の安定を優先したい人にとっては、納得できる選択になる場合があります。
出典:厚生労働省 職業情報提供サイト「job tag」保健師(2026年7月28日確認)
看護師から保健師になるための方法
すでに看護師免許を持っている方が保健師になるには、保健師国家試験の受験資格を得たうえで試験に合格し、免許を申請する必要があります。
保健師の教育課程がある学校・養成所を探す
最初に、保健師国家試験の受験資格を得られる指定学校や保健師養成所を探します。
修業期間、入学条件、選考方法、学費、実習場所、通学方法は学校ごとに異なります。
看護師免許取得後に進学する場合は、原則1年以上の保健師教育課程が選択肢になります。
募集停止や定員変更が行われる可能性もあるため、出願前に各学校の公式情報と、厚生労働省が公表する国家試験の受験資格を確認してください。
入学試験を受ける
学校によって、筆記試験、小論文、面接、書類選考などが行われます。
面接では、保健師を目指す理由や、看護師経験をどのように生かしたいかを聞かれる可能性があります。
「夜勤を避けたい」という理由だけでなく、予防や地域保健に関心を持った具体的な経験を整理しておきましょう。
必要な科目と実習を修了する
入学後は、公衆衛生看護学、疫学、保健統計学、保健医療福祉行政論などを学び、必要な実習を行います。
看護師経験があっても、保健師として必要な教育課程を省略できるとは限りません。
実習期間中の勤務調整や生活費も含めて、無理のない学習計画を立てることが重要です。
保健師国家試験に合格して免許を申請する
教育課程を修了した後は、保健師国家試験を受験します。
合格しただけでは免許証は交付されないため、合格後に保健師免許の申請手続きが必要です。
国家試験の日程、出願方法、必要書類は年度によって変わる可能性があります。
受験する年度の厚生労働省公式情報を確認してください。
出典:厚生労働省「保健師国家試験の施行」(2026年7月28日確認)
保健師への転職を成功させるポイント
保健師は勤務先によって仕事の対象や採用方法が異なります。
資格取得だけを目標にせず、希望する働き方から逆算して準備しましょう。
希望する保健師の種類を決める
行政、企業、学校、医療機関では、仕事内容も採用時期も異なります。
「誰の健康を支援したいのか」「個別相談と事業企画のどちらに関心があるか」「公務員試験を受けるか」などを整理すると、進む方向を決めやすくなります。
看護師経験を棚卸しする
看護師として経験した診療科、患者指導、退院支援、地域連携、健康相談などを書き出しましょう。
たとえば、糖尿病患者への生活指導、退院後の療養支援、多職種カンファレンスの経験は、保健指導や関係機関との連携に生かせます。
経験年数だけでなく、保健師業務との接点を説明することが大切です。
未経験者への教育体制を確認する
「未経験可」の求人であっても、受け入れ体制が整っているとは限りません。
研修期間、指導担当者の有無、相談体制、独り立ちまでの流れ、担当する業務範囲を確認しましょう。
産業保健師の場合は、産業医や人事担当者との役割分担も重要です。
在職中から情報収集を始める
保健師養成課程への進学や自治体の採用試験には、出願期間や試験日程があります。
退職してから調べ始めるのではなく、在職中から学校の募集要項、自治体の採用情報、企業求人などを確認しましょう。
収入が途切れる期間も考え、学費と生活費の準備を進めておくと安心です。
保健師求人を選ぶときのチェックリスト
保健師求人では、職種名だけでなく、実際の業務内容や勤務条件を確認することが重要です。
次の7項目を求人票、面接、職場見学などで確認しましょう。
- 月平均の残業時間
- 夜勤回数
- オンコールの有無と頻度
- 有給休暇の取得率
- 離職率
- 人員配置
- 教育・研修体制
あわせて、保健師業務と看護師業務の割合、家庭訪問や出張の頻度、休日出勤、雇用形態、契約更新の条件も確認してください。
求人票だけで分からない項目は、採用担当者へ質問する方法があります。
現在の職場がつらく、急いで進路を決めようとしている方は、看護師を辞めたいときの限界サインと判断基準も確認し、心身の安全を優先してください。
看護師から保健師への転職でよくある質問
保健師への転職を検討している看護師が迷いやすい疑問について、要点をまとめます。
Q1. 看護師免許があれば保健師として働けますか?
いいえ。
看護師免許だけでは保健師として働けません。
指定された教育課程を修了して保健師国家試験に合格し、保健師免許を取得する必要があります。
Q2. 働きながら保健師資格を取得できますか?
学校や勤務先の条件によっては可能ですが、実習や平日の授業があるため、常勤看護師として働きながらの両立が難しい場合があります。
授業日程、実習期間、勤務調整の可否を事前に確認してください。
Q3. 保健師は夜勤がありませんか?
行政、企業、学校などは日勤中心の職場が比較的多いものの、すべての求人で夜勤や時間外対応がないとは限りません。
休日出勤、緊急対応、出張、オンコールの有無を確認しましょう。
Q4. 保健師へ転職すると年収は上がりますか?
必ず上がるわけではありません。
勤務先、地域、経験、雇用形態、賞与、手当によって異なります。
夜勤手当がなくなることで、病棟看護師時代より年収が下がる可能性もあります。
Q5. 保健師未経験でも採用されますか?
未経験者を募集する求人もありますが、採用可否は募集状況、看護師としての臨床経験、応募条件、教育体制などによって異なります。
「未経験可」だけで判断せず、研修内容や指導体制を確認してください。
まとめ
看護師から保健師へ転職するには、保健師の教育課程を修了し、保健師国家試験に合格して免許を取得する必要があります。
看護師経験は保健指導や健康相談、多職種連携などに生かせますが、資格を取得すれば希望する職場へ必ず転職できるとは限りません。
行政保健師、産業保健師、学校や健診機関で働く保健師では、対象者、仕事内容、採用方法、勤務条件が異なります。
平均年収だけで判断せず、基本給、賞与、手当、休日、残業、教育体制まで比較することが大切です。
まずは希望する保健師の働き方を決め、養成課程の入学条件と費用、求人の応募条件を確認しましょう。
在職中から情報を集め、資格取得期間と転職時期を含めた計画を立てることが、後悔の少ない転職につながります。