利用者との別れを経験するたびに、

「もっとできることがあったのではないか」

「また看取りに立ち会うのが怖い」と感じていませんか。

介護士として丁寧に関わってきたからこそ、亡くなったあとに深い悲しみや無力感が残ることがあります。

仕事へ行くのがつらくなり、「介護の仕事を続けるべきか、辞めるべきか」と迷うのも不自然なことではありません。

ただし、看取りがつらいという気持ちだけで、今すぐ介護士を辞める必要があるとは限りません。

必要なのは、悲しみの大きさだけで決めるのではなく、心身の回復状態、職場の支援体制、今後も同じ環境で働けるかを分けて確認することです。

この記事では、看取りのつらさで辞めたくなった介護士に向けて、続けるか辞めるかの判断基準と、退職を決める前に試したい対処法を分かりやすく解説します。

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この記事でわかること

この記事を読むと、看取り後の気持ちを整理し、今後の働き方を考えるための視点が分かります。

  • 看取りのあとにつらくなる理由
  • 一時的な悲しみと、休養や受診を考えたい状態の違い
  • 介護士を続けるか辞めるかを判断する基準
  • 今の職場で続けるために相談したいこと
  • 異動や転職を考えたほうがよい職場の特徴

看取りのつらさで辞めたくなるのは弱いからではない

利用者の生活を長く支えてきた介護士ほど、別れを単なる業務の終了として割り切れないことがあります。

悲しみを感じるのは、介護士として不適格だからではなく、その人を大切にしてきた証しでもあります。

利用者との関係が深いほど喪失感が大きくなる

毎日の食事、排せつ、入浴、会話などを通して関係を築いてきた利用者との別れは、家族とは異なる形であっても大きな喪失です。

頭では「いつか別れが来る」と分かっていても、気持ちがすぐに追いつくとは限りません。

思い出が何度も浮かぶ、涙が出る、寂しさを感じるといった反応は、看取り直後には起こり得ます。

まずは悲しんでいる自分を責めず、感情があることを認めることが大切です。

「もっとできたかもしれない」という後悔が残る

看取り後には、「あの声かけでよかったのか」「もっとそばにいられたのではないか」と、自分の対応を振り返り続けることがあります。

しかし、結果を知ったあとでは、当時よりも多くの選択肢があったように見えやすいものです。

一人の介護士が、利用者や家族のすべての希望をかなえることはできません。

医師、看護師、ケアマネジャー、ほかの介護職員など、チーム全体で行った支援として振り返る必要があります。

悲しむ時間がないまま次の業務が始まる

人手不足の職場では、看取りを終えた直後にも通常業務が続きます。

気持ちを整理する時間がないまま次の利用者へ対応し、悲しみを押し込めてしまうこともあります。

つらさの原因が看取りそのものだけではなく、休めない勤務、人員不足、相談できない雰囲気にある場合、個人の努力だけでは解決しにくくなります。

最初に確認したい心と体の状態

続けるか辞めるかを考える前に、今の自分が落ち着いて判断できる状態かを確認しましょう。

強い疲労や不眠があるときは、大きな決断よりも休養と相談を優先します。

時間の経過とともに少しずつ回復しているか

悲しみが残っていても、眠れる日が増えた、食事が取れるようになった、利用者とのよい思い出も浮かぶようになったなど、少しずつ変化があるなら、回復の途中である可能性があります。

「まだ悲しいか」だけでなく、「一週間前より少しでも日常生活を取り戻せているか」という時間の変化を見ることが大切です。

仕事や日常生活に強い支障が続いていないか

眠れない、食欲がない、動悸や吐き気がする、涙が止まらない、集中できず事故が怖いなどの状態が続いている場合は、我慢して勤務を続ける段階ではありません。

上司に勤務調整や休暇を相談し、必要に応じて医療機関へ相談してください。

「消えてしまいたい」「自分を傷つけたい」という気持ちがある場合は、一人で抱えず、身近な人、医療機関、地域の相談窓口などへ早めにつながることが必要です。

厚生労働省の「こころの耳」相談窓口では、働く人や家族が電話、SNS、メールで相談できます。

看取り以外の負担も重なっていないか

つらさの背景に、夜勤の連続、身体介護の負担、人間関係、責任の集中、家庭での心配などが重なっていることがあります。

看取りだけを原因と決めず、負担を一つずつ書き出してみましょう。

「看取りがなければ今の職場で働きたい」のか、「看取りがなくても今の職場はつらい」のかを分けると、必要なのが休養、配置転換、転職、介護職以外への転向のどれなのかが見えやすくなります。

自分の状態が一時的な「辞めたい」なのか、休養を優先したい限界の状態なのか迷う方は、

関連記事「『辞めたい』と『限界』は違う|介護士が今の自分を見極める方法」も参考にしてください。

看取り後に職場で確認したい支援体制

看取りを経験した職員への支援は、個人の気持ちの持ち方だけでなく、職場の体制にも左右されます。次の内容があるかを確認しましょう。

チームで振り返る機会があるか

看取り後のカンファレンスやデスカンファレンスでは、ケアの経過、利用者や家族の希望、よかった対応、今後の改善点をチームで振り返ります。

目的は誰かを責めることではなく、経験を共有して次のケアへ生かすことです。

振り返りの場で、自分一人では見えなかった支援の意味や、ほかの職員も同じ迷いを抱えていたことに気づける場合があります。

上司や同僚へ気持ちを話せるか

「つらい」と話したときに、経験不足や甘えとして否定されず、まず話を聞いてもらえるかは重要です。

話す相手は直属の上司に限りません。信頼できる先輩、施設の相談窓口、産業医など、自分が話しやすい相手を選んで構いません。

一時的な勤務調整や配置変更ができるか

看取りが続いているフロアから一時的に離れる、夜勤回数を減らす、休暇を取るなどの調整で回復できる場合があります。

退職届を出す前に、「いつまで」「何を減らすか」を具体的に相談してみましょう。

厚生労働省の介護雇用管理改善等計画でも、介護労働者の健康の保持・増進やメンタルヘルス対策が雇用管理上の課題として示されています。

職員の心身を守る体制は、本人だけの問題ではなく、職場が取り組むべき課題でもあります。

介護士を続けるか辞めるかの判断基準

判断の中心は、「看取りが悲しいかどうか」ではありません。

悲しみがあっても支援を受けながら働けるのか、それとも健康や安全を守るために環境を変える必要があるのかを見極めます。

確認すること続ける選択を考えやすい状態休養・異動・転職を考えたい状態
心身の回復休むと少しずつ回復している不眠や食欲低下などが続き、生活や業務に支障がある
相談環境上司や同僚に話せ、振り返りの機会がある相談しても否定され、責任を一人で負わされる
勤務調整休暇、夜勤回数、配置について相談できる体調不良を伝えても勤務が変わらない
看取りへの考え不安はあるが、学び直して関わりたい気持ちもある看取りの場面を避けたい気持ちが強く、安全なケアが難しい
職場への希望看取り以外の仕事内容や人間関係には納得している人員不足や人間関係など、看取り以外の問題も改善しない

今の職場で続ける選択が考えられる場合

休養によって少しずつ回復し、上司や同僚へ相談できる場合は、今すぐ辞めずに働き方を調整する余地があります。

看取りの研修を受ける、カンファレンスへ参加する、先輩とケアを振り返ることも、不安を整理する助けになります。

悲しみがなくなることを目標にする必要はありません。

悲しみを抱えながらも、自分だけで責任を背負わず、次のケアへつなげられる体制があるかが大切です。

異動や転職を考えたほうがよい場合

相談しても「介護士なら当たり前」と片づけられる、看取り後の振り返りがない、明らかな人員不足のまま対応を任される、体調不良でも休めないといった状況では、環境を変えることを検討してよいでしょう。

特に、ケアの安全に不安がある状態や、心身の不調が悪化している状態では、退職日まで無理に耐えるより、休養や受診を優先してください。

職場を変えるべき状態か迷う場合は、介護士が辞めどきを見極める7つのサイン|辞めたほうがよい職場の特徴も判断材料になります。

介護職そのものを辞めるかは職場を変えたあとでも判断できる

看取りの機会が比較的多い職場もあれば、仕事内容や利用者との関わり方が異なる職場もあります。

ただし、同じサービス種別でも看取りの方針や担当範囲は事業所ごとに異なるため、「この職場なら看取りがない」と決めつけず、応募前に確認することが必要です。

介護の仕事で身につけた観察力、声かけ、家族対応、チーム連携の経験は、職場が変わっても無駄になりません。

今の施設を離れることと、介護職としての経験を捨てることは別です。

辞めると決める前に試したい4つのこと

緊急に離れる必要がない状態であれば、次の対応を試してから判断すると、後悔を減らしやすくなります。

1.看取りの経過と自分の気持ちを分けて書く

「実際に起きたこと」「自分が行ったケア」「そのとき感じたこと」「今も気になっていること」を分けて書きます。

事実と感情を分けることで、自分を責め続けている部分に気づきやすくなります。

個人で記録するときは、利用者名などの個人情報を書かず、施設の記録を持ち出さないようにしてください。

2.上司へ具体的な支援を相談する

「つらいです」だけでは希望が伝わりにくい場合があります。「一度カンファレンスで振り返りたい」「今月は夜勤を減らしたい」「看取りが続くフロアから一時的に離れたい」など、必要な支援を具体的に伝えましょう。

3.期限を決めて様子を見る

何か月も我慢し続けるのではなく、「勤務を調整して2週間」「休暇後1か月」など、見直す時期を決めます。

その時点で睡眠、食事、出勤前のつらさ、仕事中の集中力が改善したかを確認します。

4.在職中にほかの職場の条件を調べる

転職すると決めていなくても、ほかの職場を調べることで、今の環境だけが介護の仕事のすべてではないと分かります。

求人票だけでは見えない項目は、見学や面接で具体的に確認しましょう。

次の職場を選ぶときの7つの確認項目

看取りの負担をきっかけに転職する場合は、看取りの有無だけでなく、勤務全体と支援体制を確認することが大切です。

  • 給与、賞与、資格手当、夜勤手当、処遇改善に関する手当
  • 月平均の残業時間
  • 夜勤の有無・回数・夜勤時の人員体制
  • 年間休日・希望休・有給休暇の取得状況
  • 離職率・平均勤続年数
  • 職員配置・利用者数・介護度・身体介護や看取りの負担
  • 教育・研修・資格取得支援

加えて、看取りの方針、看護職や医師との連携、夜間の連絡体制、看取り後のカンファレンス、職員への心理的支援について質問しましょう。

数字だけでなく、「最近の看取りではどのように職員を支えましたか」と具体例を尋ねると、実際の体制を確認しやすくなります。

看取りのつらさに関するよくある質問

ここでは、看取りを経験した介護士が抱きやすい疑問に答えます。

Q1. 看取りのたびに泣くのは介護士として失格ですか?

失格ではありません。

利用者を大切に思ってきたからこそ、涙が出ることがあります。

ただし、利用者や家族への対応が難しいほど感情が高ぶる場合は、その場を一時的に同僚へ代わってもらい、落ち着ける場所で休みましょう。

Q2. どのくらいつらさが続いたら受診したほうがよいですか?

日数だけで一律には判断できません。不眠、食欲低下、動悸、強い不安、集中困難などにより、仕事や日常生活へ支障が出ている場合は、早めに医療機関へ相談してください。

つらさを我慢できるかではなく、生活への影響で判断することが大切です。

Q3. 看取りがない介護施設へ転職できますか?

看取りの頻度や方針は、サービス種別だけでなく事業所によって異なります。

看取りを行っているか、介護士が担う範囲、夜間の対応、医療職との連携を応募前に確認してください。

「看取りなし」という言葉だけで判断せず、実際の対応例まで尋ねると安心です。

Q4. 利用者のことが頭から離れないときはどうすればよいですか?

無理に忘れようとせず、信頼できる同僚と振り返る、個人情報に配慮して気持ちを書く、十分な睡眠と食事を取るなど、感情を整理する時間をつくりましょう。

思い出すことで強い苦痛が続く場合は、職場の相談窓口や医療機関へ相談してください。

Q5. 辞めると利用者を見捨てることになりますか?

退職は利用者を見捨てることではありません。

職員の健康と安全が保てない状態で働き続けることは、本人にも利用者にもよい結果をもたらさない場合があります。

必要な引き継ぎと就業規則に沿った手続きを行えば、自分を守るために環境を変えて構いません。

資格、お金、職場への罪悪感から決断できない方は、介護士を辞めたいのに辞められない5つの理由|資格・お金・罪悪感の正体もあわせてご覧ください。

まとめ|悲しみの強さだけで辞めるかを決めなくてよい

看取りのつらさは、利用者へ真剣に向き合ってきた介護士だからこそ生じることがあります。

悲しいという気持ちだけで、自分は介護職に向いていないと決める必要はありません。

一方で、不眠や食欲低下などが続く、相談しても支援を受けられない、人員不足や過重な勤務が改善しない場合は、休養、受診、異動、転職を考えてよい状態です。

まずは心身の安全を確保し、看取りそのものの悲しみと、職場環境によって増えている負担を分けて考えてみてください。

今の職場を離れる選択をしても、利用者へ丁寧に関わってきた経験や、看取りから学んだことまで失われるわけではありません。

参考:厚生労働省「介護雇用管理改善等計画」厚生労働省「こころの耳」相談窓口